2011年6月9日 | |||
![]() アメリカ合衆国海洋大気局 (NOAA) 水産増養殖政策 1 |
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目的 この政策の目的は、NOAAの多様な管理任務と広範な社会的・経済的目標に基づいて、海洋における持続可能な増養殖の発展を進めることである。この目的を達成するために、NOAAは増養殖に関する管理のための決定を下す際には、環境、社会、経済上の検討結果を統合することが求められる。この政策は、健全で生産的な海洋や沿岸域の生態系を維持し、特定の海域を保護し、乱獲された資源を再建し、絶滅危惧種を復活させ、海洋と沿岸域の生息環境を復活・保護し、海洋環境の競合する利用のバランスをとり、沿岸集落における雇用とビジネスチャンスを創出し、安全で持続可能な水産食品の生産を可能にするために、NOAAが行う取り組みの中で増養殖が重要な構成要素であることを再確認している。 |
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政策に関する声明 本政策では、「増養殖」とは、漁業、遊漁(リクリェーション)、あるいは公共の目的のために、水生生物の増殖や養殖を行うことと定義する。この定義によれば、以下の4つの目的のために行われる魚類、介類、植物、藻類、その他水生生物2すべての認可を受けた生産が含まれることとなる。1)食用やその他の商品生産、2)漁業やリクリェーションのための資源の補充、3)種の回復と保存計画の下で絶滅危惧・危急種と位置付けられている種個体群の再生、4)海洋および五大湖における水生生物の生息環境の回復および保全。 健全な海洋、活力ある沿岸域集落・経済をめざす海洋管理任務および戦略的な到達目標についてのNOAAの政策は以下のとおりである:
政策にとっての基礎 NOAAは、公益業務、科学、環境管理に関する責務に基づき、海洋の増養殖問題に関する規制、研究、研究成果の発信(outreach)、国際的な活動に関する長い歴史を持っている。1980年の国家増養殖法は連邦のすべての部局に適用されるものであるが、それには「合衆国において、増養殖の発展を促進することは、国民的関心事であり、国の政策である。」と述べられている。NOAAの増養殖に関する活動の法的根拠は、マグヌッソン−スチーブンス漁業保護管理法や海産ほ乳類保護法、絶滅危惧種法、沿岸域管理法、国家海洋鳥獣保護法、そして、魚類と野生生物の調和法である。国家環境政策法を加えてこれらの法律の下、NOAAは、漁業管理計画、鳥獣保護管理計画、実行許可、適切な施設配置、さらには連邦、州政府、地方の段階での種々の管理部局との協議の進展をはかることで、計画中あるいは既配置の増養殖施設が環境へ与えうる負のインパクトを検討、防止、緩和させることに責任を負っている。国家海洋基金大学計画法やサルトンストール−ケネデイ法、遡河魚類保全法、管轄権の異なる海域にまたがる漁業に関する法律(the Interjurisdictional Fisheries Act)、商取引海洋法、そして、農業流通法などを含む他の法律は、NOAAが、公的・私的双方の増養殖分野に対して助力する権限を与えている。さらに、海洋と人の健全法では、増養殖に関する研究が要請されている。 NOAAは、増養殖対象種によってはマグヌッソン−スチーブンス漁業保護管理法(マグヌッソン−スチーブンス法)に基づき、保全及び管理が必要な種に関する漁業管理計画によって、排他的経済水域の中での取り締まり活動を行うことができる。さらに、鳥獣保護区内、あるいは保護区に影響を及ぼす恐れのある区域内での増養殖活動については国家海洋鳥獣保護法(NMSA)に基づく取り締まり活動を行うことも出来る。NOAAは、該当する州政府との公式な協定書によって制限された州管轄海域を除いて、州と連邦それぞれの管轄する海域における保護区内の増養殖に対して直接調整を行う役割を有している。また、絶滅危惧種法や海産ほ乳類保護法、マグヌッソン−スチーブンス漁業保護管理法の重要魚類生息地条項、国家環境政策法および他の法律などの権限に基づいて、他の連邦政府の許認可部局との調整を行う。NOAAは沿岸域管理法に基づき、沿岸域で許容できる用途を特定している州の沿岸管理計画を審査、承認する。さらに、これらの計画と連邦内の一貫性を監督する5。 本政策を明らかにする上で、NOAAは、増養殖およびその影響についての科学の現状に関する省庁の組織だった知見を利用して、過去のNOAAと商務省の増養殖政策と計画書の妥当性を評価し、現在と将来の明瞭な課題と可能性を検討した。さらにNOAAは、2010年4月から5月の第1次パブリックコメント期間とこの間7回にわたって開催された公聴会を通じ、また2011年2月に発表されたこの政策の公開草案の60日間のパブリックコメントの期間を通じて得られた国民の意見に配慮した6。この政策は、NOAAの次世代戦略計画におけるいくつかの目標と提携しており、水産食品における安全と持続性に対するNOAAの戦略目標の最も重要な構成要素となっている7。 本政策はまた、国家海洋政策や沿岸と海洋の空間計画(CMSP)のフレームワーク(枠組み)にも紹介されている8。国家海洋政策の中に見られるたくさんの主題―例えば、健全で多様な生態系の保護、維持と回復;海洋の持続可能な利用の支援;科学的理解の深化とよりよい決定を下すための知識の応用―が、この文書の中には繰り返し述べられている。本政策はまた、沿岸と海洋の空間計画(CMSP)における国家的目標を反映しており、CMSPが進展する中で増養殖が適切に考慮されるように準備する。商務省の重要な部局であり、プログラムに添った増養殖に関する責任を担うNOAAは、広範囲にわたる商務省増養殖政策を補完するものとして本政策を明らかにした。 背景 合衆国で消費する海産食品のほぼ84%は輸入に依存しており9、その約半分は養殖業からのものである。2009年には、養殖による生産物が世界中で消費されるすべての海産食品の半分以上を供給するところにまで達した10。しかし、合衆国で消費される海産食品の5%しか、国内の養殖業は供給してない11。人々や消費者の水産食品の健康上への有効性の認識がさらに増加する結果、水産食品に対する合衆国と世界の要求は引き続き成長すると考えられる。連邦政府が出した最新の「アメリカ人のための食生活指針」では、アメリカ人に現在の水産物消費の2倍以上の摂取を推奨している12。天然資源は努力量を増やしても増加する要求を賄えないと見積もられており、供給面での将来の増加は外国の増養殖や国内の増養殖生産の増加、そして幾分かはその両方の組み合わせに頼らざるを得ない。 現存する国内の海産増養殖業は主に介類養殖で成り立っているが、沿岸域の魚類や藻類生産も含まれる。さらに商業上、娯楽上、また絶滅が危惧されるなど重要な種の個体群補給のため、また生息域の再生(例えば、カキ礁)のために用いられる魚介類の種苗生産も含まれる。海洋の増養殖において、将来実用化が期待される先端技術には、陸上での閉鎖循環システム、バイオ燃料および食品以外の製品生産のための藻類生産技術、異なるタイプの増養殖を統合するシステムや他分野の利用と養殖を組み合わせるシステム、外洋に面した海域におけるシステムなどがあげられる。 増養殖の発展に関係する連邦の支援、取り決め、権限は多くの部局に及んでいる。特に、FDA(食品医薬品局)や環境保護局、陸軍工兵隊、FWS(魚類野生動物局)、そして農務省である。これらの部局はお互いに、また、産業、州政府、学術部門と協力しあい、増養殖施設に関する課題に取組み13、また、産業の持続性を改善する新技術開発を促進している。本政策は、これらの調整された取り組みにNOAAが継続的に関わる上での根拠となっている。 貢献(利益)と課題 海洋環境における商業的な養殖生産、野生種の回復への関心が増加しており、それに伴って増養殖が与える可能性のある経済的、環境的、そして社会的な影響に関する議論が多く、これらの問題についてより良い国民の理解を得る必要性も増加している。持続可能な増養殖の持つ利益には、種や生息域の再生と保全、栄養塩の除去、食の安全や人間の健康と栄養に貢献する安全で地元産の水産食品の提供、低栄養段階の水産食品の増加する生産、漁獲漁業との相乗作用(魚類加工残渣を養殖用の餌に利用するなど)が含まれる。持続可能な増養殖は、地元集落における雇用創出や労働の場である海岸線地域の文化的独自性を維持することで経済的・社会的利益をもたらすことにも貢献できる。増養殖によって引き起こされる環境上の課題は、増養殖活動の種類や範囲、立地条件によって異なるが、残餌や排泄物による栄養塩や化学物質負荷、使用水の需要、魚病や侵入種、野生種に対する競合や遺伝的影響の可能性、絶滅危惧種や保護されている種への影響、保護されており影響を受けやすい海域への影響、他種の生息環境への影響、養殖用の餌としての餌魚の利用などが含まれる。経済的社会的課題には、国内養殖業の生き残りおよび/または漁業者が受け取る漁獲生産物価格に影響する流通における競争、海洋環境の他の用途との競争、生息域と生態系サービスの価値の低下、様々な文化的な伝統や価値への影響が含まれる。 安全で地域色があり持続性を保持して生産される水産食品への消費者の要求の広がり、エネルギー費用の増加、現在、合衆国に水産食品を輸出している国々における水産食品需要の高まり、沿岸域での仕事を維持することへの関心の増大、これらが持続可能な国内増養殖生産を支える新たな駆動力である。連邦や州の段階での規制、科学の進歩、消費者の要求、技術革新、産業の最も効率的管理実践の方法、責任ある資源回復のための手順書、種苗生産の実施などを通じて、合衆国における増養殖生産は−規模の大小を問わず−持続可能な実践に向かって発展してきている。本政策は、以下に記述した活動を通して、NOAAがこれらの発展をさらに進めることを認可している。
NOAAの増養殖に関する優先権 政策内容を履行するために、NOAAは次の優先権を認定している。 科学と研究
規制
技術革新、提携、そしてアウトリーチ
国際的な協同
実施と定期的な評価 NOAAは、文書の発出後直ちにこの政策を実施する予定である。今後はNOAAの長官が改正あるいは撤廃するまでは、この政策が海域での増養殖に関するNOAAのすべての活動を導くことになる。 |
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付録 NOAAは、本政策に関する重層的な取り組みを行う予定である。また増養殖活動を規制するための特別な権限に関するより詳細な政策を公表する予定である。これら重層的な文書は、包括的な政策への付録として示される。 付録1.連邦内の領海における増養殖についてのNOAAの手引き 付録1は、合衆国の排他的経済水域内における増養殖生産に関するNOAAの規制活動の目標を設定し、NOAAがそれぞれの目標を達成するために取るであろう原則と接近方法の一覧を提供している。今後、NOAAはそれぞれの目標を達成するために取るであろう具体的な活動を確認していくであろう。 付録1 この付録の目的は、合衆国の排他的経済水域内における増養殖生産に関するNOAAの規制と計画に基づいた活動を紹介するための一連の目標を設定し、NOAAがそれぞれの目標に到達するために取る活動の一覧を提供することにある。NOAAは、適切な権限のもと、連邦の協力者とともに、部局の権限と資金の範囲内で、これらの活動を実行する。 これらの目標と活動は、NOAAの増養殖政策の拡張版であり、NOAAが行う海の増養殖に関係する活動のすべてに広く適用されるものである。 目標1.生態系との共存−連邦領海内における増養殖の進展は、健全で生産性が高く、回復力のある 海洋生態系の機能と共存できるものである。 NOAAはこの目標を次の事項によって達成する。
目標2.他の利用との共存−領海内の増養殖施設等は、その海洋環境に関する他の許可された利用と共 存可能な方法で、設置・操業される。 NOAAはこの目標を次の事項によって達成する。
目標3.最も有益な科学と情報−領海内における増養殖に関する管理決定は、利用しうる最良の科学と 情報に基づいている。 NOAAはこの目標を次の事項によって達成する。
目標4.社会経済的利点−領海内の持続的増養殖への投資は、地方や州の到達目標を考慮しつつ、国家 の経済や沿岸の集落、水産食品消費者へ純利益を与えるものでなければならない。 NOAAはこの目標を次の事項によって達成する。
目標5.産業としての説明責任−領海内での養殖施設経営に対し、長期にわたるアクセスを確保するた めに、操業者は環境、野生種、人間の安全を守ること、及び継続的監視を行い報告することに、責任 を負わなければならない。 NOAAは、連邦政府部局や他の協力者と共同して、適切な枠組みを明らかにするために働き、養殖 施設の操業者が次の事項を実行することを通して、この目標を達成する。
目標6.承認手順−領海内における増養殖操業の可否判定は、時宜を得た、偏りの無い、科学的な裏付けがあり効率のよい平明な方法で実施される。 NOAAは、次の事項によってこの目標を達成する。
目標7.一般への宣伝−社会が、領海内における持続可能な増養殖の推進やそれと関連した環境や社会経済的課題と利益に関する正確な認識を持つ;監視情報は、直ちに一般が利用できる。 NOAAは、この目標を次の条項によって達成する。
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