2011年6月9日 | ||||
アメリカ合衆国商務省(USDOC)の 水産増養殖政策 |
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目的 この政策の目的は、合衆国内における経済成長と雇用機会を増加させ、また世界市場での合衆国の競争力を高めて輸出を増大させるという商務省の目標に従って、持続可能な増養殖が発展するように支援することである。この政策は商務省が管轄する広い領域、すなわち貿易、科学技術、イノベーションとアントルプルヌールシップ(注)、経済発展、環境管理に適用される。計画的な増養殖に責任を有する商務省に属する重要な部局である国家海洋大気局が、より詳細な増養殖政策を掲げ、この包括的な政策を補足し完全なものにしている。 |
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本政策では、「増養殖」とは、漁業、リクリェーション、あるいは公共の目的のために、水生生物の増殖や養殖を行うことと定義する。この定義によれば、以下の4つの目的のために行われる魚類、介類、植物、藻類、その他水生生物すべての認可を受けた生産が含まれることとなる。1)食用やその他の商品生産、2)漁業やリクリェーションのための天然資源の補充、3)種の回復と保存計画の下で絶滅危惧・危急種と位置付けられている種個体群の再生、4)水生生物の生息環境の回復および保全。 アメリカの養殖産業(現在の規模は約10億ドル)は、食用淡水魚の生産が主要なものである。海面養殖部門(現在の生産額の約20%)は、主に貝類が占めているが、沿岸域や陸上での魚類や藻類養殖も含まれる。アメリカの増養殖のもう一つの重要な構成要素は種苗生産(hatchery production)である。これは漁業やリクリェーションで重要な種や絶滅危惧種などの個体群を補給したり、生息場所(カキ礁など)を修復する際に用いられる。将来、実用化が期待される先端技術には、陸上での循環システム、バイオ燃料や食糧以外の製品の生産のための藻類培養技術、異なるタイプの養殖を統合するシステムや他分野の利用と養殖を組み合わせるシステム、外洋に面した海域におけるシステムなどがあげられる。 合衆国における増養殖は、沿岸域の集落社会から農業上の中核地域にわたって、雇用や様々なビジネスチャンスを提供して、地元、地方、さらには国家の経済に大きく貢献することができる。また、商務省はこの政策を施行し、農務省、米国食品医薬品局、内務省、増養殖合同小委員会などと協力することにより、革新的かつ持続可能な増養殖技術を開発、実証、利用し、広く世界中に持続的増養殖の実践とそのシステムを広げるという分野で合衆国が世界的なリーダーとなることに貢献することができる。 背景 水産業および水産物はアメリカ人の生活にとって重要な構成要素である。2007年には、アメリカは合計で約50億ポンドの水産物を消費した。これは1人当たり年間約16ポンドの消費に相当する。「アメリカ人にとっての食事指針」最新版(2010年)は、アメリカ人は水産物消費量を現在の2倍以上にすること、すなわち週3.5オンスから8オンスに、さらに、妊娠中や授乳中の女性は、週に8〜12オンスの水産物をいろいろな製品から摂ることを推奨している1。合衆国は世界第3位の水産物の消費国であり、その需要は国内の天然資源からの供給を上回っている。現在、合衆国は水産物の84%を輸入しており、その約半分が養殖に関連したものである2。現在の水産物の貿易赤字は約90億ドルである。国内養殖業の成長は、漁村・農村集落を支え、合衆国における新たな養殖業を基礎とした産業の支えとなる。 政策の提示 DOCの政策は以下の通りで、1980年の国家増養殖法を踏襲している。
政策の推進 この政策を推進するために、商務省とその事務局は、その他の連邦政府関係機関、アメリカ連邦議会、州・地元・種族政府、産業界・学会・非政府組織や他の利害関係者と、国家的、あるいは地方的、あるいは地元のレベルで、連携して次の事項に取り組む。
アメリカ商務省は、この文章が公開され次第この政策の遂行を開始する。商務長官により改正または破棄されるまで、商務省と事務局の海産増養殖に関する活動は、この政策に沿って行われる。 |
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(訳:杜多 哲研究開発専門員,協力:松成 宏之研究員) | ||||