ウナギ人工ふ化仔魚の給餌による成長


[要約]
 ウナギのふ化仔魚の初期飼育に世界で初めて成功し、人工飼料給餌による仔魚の成長を確認した。成功の主因は、初期の飼餌料として様々なものを試した結果、サメ卵低温乾燥粉末を海水に溶かして与えたことである。本飼料を水槽底に静かに注入して与えたときに最も活発な摂餌が見られた。本飼育法は今後産業面での応用も考えられるため、特許申請を行った。
養殖研究所・繁殖生理部・発生生理研究室
[連絡先]  05996−6−1830
[推進会議]  水産養殖
[専門]  魚介類繁殖
[対象]  ウナギ
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 ウナギの養殖種苗であるシラスウナギの不足と価格の高騰のため、本種の人工種苗生産技術開発の一層の促進が急がれている。しかし、1973年に人工ふ化に成功して以来多大な努力が積み重ねられてきたにもかかわらず、ふ化仔魚の飼育には成功していなかった。その最大の原因は、ウナギふ化仔魚の飼育に有効な初期餌料が見つかっていなかったことにあり、ワムシを摂餌させることには成功していたものの、ワムシの給餌によって仔魚の生存期間の延長や卵黄吸収後の成長は確認できなかった。そこで、有効な初期餌料の開発とそれを用いた飼育法の確立を目的とした。

[成果の内容・特徴]

  1. 摂餌可能と考えられる発育段階まで飼育したウナギ仔魚に、餌として様々なものを与えて適正餌料を検討したところ、サメ卵低温乾燥粉末を海水に懸濁させたものを水槽底に静かに注入して与えた時に、最も活発な摂餌が見られた(図1)。
  2. 飼育は5リットルアクリルボウル水槽で行い、給餌は1日4回とし、給餌後2時間止水にした後、毎分0.3リットルの23℃に調温したろ過海水を注入した。また、毎日、底掃除の代わりに夜間サイフォンを用いて仔魚を清潔な水槽へ移した(図2)。
  3. この飼育法により、ふ化後9日目に分槽して給餌を開始した飼育例では、13日目に無給餌区が全滅したのに対して、給餌区は79%が生存し、これまでの最長生存記録の18日目でも56%が生き残っていた。無給餌区は平均全長7mmに達しなかったが、給餌区では11日目:7.1mm、18日目:8.1mm、24日目:8.7mmまで成長した。(図3;写真は6日目から給餌を行った別の飼育例)。
[成果の活用面・留意点]
 本飼育法の開発によってウナギふ化仔魚は生存期間が大幅に延長し、明らかに成長したことが確認され、世界に先駆けウナギ人工種苗生産のための初期の給餌飼育に展望が開けた。本研究の成果は、待望久しいシラスウナギの人工生産に向けて極めて大きな前進であり、今後産業面での応用も考えられるため特許申請を行った。

[具体的データ]

図1.餌に群がるウナギ仔魚(ふ化後18日目)

図2.アクリルボウル水槽の構造とサイフォンによる仔魚の移動

図3.給餌の有無による成長の比較(スケールは1目盛り1mm)


[その他]
研究課題名:内分泌学的手法を応用したウナギの催熟
予算区分 :大型別枠研究(バイオメディア計画)
研究期間 :平成9年度(平成5〜9年度)
研究担当者:田中秀樹、香川浩彦、太田博巳、奥澤公一、黒川忠英
発表論文等:1)田中秀樹1997.ウナギ人工種苗生産研究の最新動向.養殖,34(8);67-69.
      2)Tanaka,H.1998.Production of eel fry. Farming Japan,32;22-27.

目次へ戻る