貧酸素水塊の動きと養魚場の環境変動、微生物活性との関係


[要約]
 五ヶ所湾での調査の結果、外洋水が底層に流入することにより湾奥で形成された貧酸素水塊が中層を通り湾口へ出ていくことが溶存酸素濃度、及びアンチモンの濃度分布から確認された。また、湾奥に蓄積された有機物等の栄養分の新たな供給により微生物活性が増大することも明らかとなった。
養殖研究所・環境管理部・環境動態研究室
[連絡先]  05996−6−1830
[推進会議]  養殖研
[専門]  漁場環境、物質循環
[対象]  微生物
[分類]  調査、研究

[背景・ねらい]
 有機物負荷が多いこともあり、養魚場では夏季の成層期に底層水が貧酸素化することが知られている。この貧酸素水塊が外洋水、あるいは河川水との混合により、表層へ持ち上げられ、養殖魚介類に悪影響を及ぼし、各地で問題となっている。それ故、貧酸素水塊の動きを把握することは養魚場の環境管理上重要である。貧酸素水塊の移動と共に、貧酸素水塊で生成或いは蓄積された水域汚濁物質、有機物等様々な物質が移流、拡散し、養魚場のみならず沿岸海域全体の生物生産、水質環境等に影響を及ぼす。今年度は、五ヶ所湾をモデルフィールドとして、貧酸素水塊が形成される成層期と、成層崩壊後の2度調査を行い、有機物分解の指標として微生物活性の変化、水域汚濁物質の代表としてアンチモンを測定し、貧酸素水塊の動きとの関係を明らかにすることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

  1. 平成8年の五ヶ所湾では8月末に成層状態であったが、9月に入り外洋水の底層への流入により成層が崩壊し、湾奥(St.6)で生成された貧酸素水塊(溶存酸素濃度が低い状態)が中層を通り湾口(St.1)へ出ていく様子が溶存酸素濃度で確認された。湾央(St.4)中層で顕著に現れている(図1)。
  2. 溶存アンチモンの濃度分布も溶存酸素と同様である(図2)。アンチモンは環境基準の要監視項目に指定された水域汚濁物質であり、河川経由で沿岸域に流入すると考えられ、河川流入量の少ない五ヶ所湾では湾奥、湾口の表層水ではほぼ同様な濃度となっている。貧酸素水塊中ではアンチモンは縣濁態となることが知られており、溶存態の濃度は減少する。五ヶ所湾では溶存アンチモンを貧酸素水塊の指標として使うことが可能である。。
  3. 成層崩壊に伴う水塊の移動によって、貧酸素水塊中に蓄積された有機物等の栄養分が新たに供給され、成層崩壊後、湾内での微生物活性(TdR Incorporation)が増大することが明らかとなった(図3)。
  4. 五ヶ所湾海水中での微生物活性は溶存有機物(DOC)濃度と良い相関が得られた(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 貧酸素水塊の指標として、河川水の流入の少ない沿岸域ではアンチモンを使うことが可能である。養魚場での微生物活動と有機物、水域汚濁物質等の循環との関係は今後の重要研究課題となろう。

[具体的データ]

図1 五ヶ所湾3定点での成層崩壊前、及び崩壊後の溶存酸素の鉛直分布

図2 五ヶ所湾3定点での成層崩壊前、及び崩壊後の溶存アンチモンの鉛直分布

図3 五ヶ所湾3定点での成層崩壊前、及び崩壊後の微生物活性の鉛直分布

図4 五ヶ所湾3定点での微生物活性と溶存有機物濃度の関係


[その他]
研究課題名:微生物活動が沿岸域における陸起源有害金属元素に与える影響に関する研究
予算区分:環境庁・地球環境研究想像推進費
研究期間:平成8年度(平成8年度〜平成10年度)
研究担当者:高柳和史、黒川知子
発表論文など:海水及びたい積物間げき水中の溶存アンチモンの半自動化定量、分析化学、
       45:1115−1120(1996)

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