亜熱帯の沿岸から採られたイソクリシスの餌としての価値について
- [要約]
- タヒチ産イソクリシスは、屋外で容易に生産できることがわかり、餌としての利用が期待された。そこでクルマエビ類幼生への餌料価値を調べたところ、珪藻類との併用により高い餌料価値が認められ、種苗生産の効率化に貢献できることがわかった。
養殖研究所・遺伝育種部・育種研究室
[連絡先] 05996−6−1830
[推進会議] 水産養殖
[専門] 水産育種
[対象] 微生物
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- 我が国の種苗生産機関では、甲殻類幼生の餌として単細胞の珪藻類であるキートセロスを使う場合が多い。ところがキートセロスの屋外培養は比較的難しく、特に多くの甲殻類が産卵する5〜8月には高水温と天候不順のために増殖率が低くなり、しばしば餌不足を招く。そこで亜熱帯沿岸から採られたイソクリシスの高水温耐性と増殖の早さに着目し、これを代替え餌料にすることをねらいとして、まずはクルマエビ類幼生への餌料価値を調べた。
[成果の内容・特徴]
- イソクリシスとキートセロスを併用して給餌することにより、クルマエビ類幼生の成長と生存率はキートセロスを単独で給餌した場合に比べて著しく上昇することが明らかになった。
- この併用給餌法により、キートセロスの必要量を半減させることが可能であり、安定した種苗生産が期待できる。
- イソクリシスはクルマエビ類の必須脂肪酸を少量しか含まない。そのため、イソクリシスの単独給餌は避け、キートセロスとの併用給餌が望ましい。
- 7〜8月にかけての培養試験により、イソクリシスは屋外培養槽内で容易に増殖することが確認できた。
- このイソクリシスはタヒチ沿岸から採集された。
[成果の活用面・留意点]
- イソクリシスはクルマエビ類の餌料生物として活用できることが明らかになった。
- イソクリシスは、これまで屋外培養が容易とされてきたナンノクロロプシスやテトラセルミスとほぼ同様に増えることが確かめられた。
- イソクリシスは増殖が容易であることや、キートセロスとほぼ同じ大きさであることから、植物性餌料を必要とする他の水産動物の飼育にも餌として利用できる可能性が示唆され、今後さらに広く利用できるものと期待される。
[具体的データ]
表1
図1
[その他]
研究課題名:有用微細藻類の遺伝的特性の解明
予算区分:経常
研究期間:平成8〜12年度
研究担当者:岡内正典
発表論文など:Nutritive Value of "Tahiti Isochrysis' Isochrysis sp. for Larval Greasy Back
Shrimp, Metapenaeus ensis, Bull. Natl. Res. Inst. Aquacult. No. 26, 1-11 (1997)
[研究成果情報一覧]
[研究情報]