ウナギの種苗生産


[要約]
 養殖ウナギの種苗(シラスウナギ)を生産することは非常に困難とされてきたが、人為的にサケ脳下垂体懸濁液や成熟誘発ステロイドホルモンを注射することにより、安定して、多量の受精卵や孵化仔魚を得ることに成功し、シラスウナギの生産に道が開かれた。
養殖研究所・繁殖生理部・繁殖生理研究室
[連絡先]  05996-6-1830
[推進会議] 水産養殖研究推進全国会議
[専門]     魚介類繁殖
[対象]     ウナギ
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 養殖ウナギの種苗は100%天然のシラスウナギに依存しているが、天然シラスウナギの漁獲量は年により変動が大きく、長期的に減少傾向にあり、これに伴う種苗価格の高騰が養鰻経営を圧迫している。一方、人為的種苗を生産する試みはすでに30年以上行われているにも関わらず、未だ成功していない。したがって、人為的に種苗を生産する技術を開発することは、緊急かつ重要な問題点である。

[成果の内容・特徴]

  1. 性的に全く未熟な養殖雌ウナギにサケ脳下垂体(性成熟を支配している内分泌器官)をすりつぶし、注射により毎週1回投与すると卵径が大きくなり成熟・排卵直前にまで達した(図1)。
  2. これらの雌ウナギに成熟誘起ステロイドを注射することにより受精可能な成熟卵を得ることができた(図1)。
  3. 得られた卵とヒト胎盤性性腺刺激ホルモンを投与して成熟した雄ウナギから得られた精子を用いて人工授精を行い多量の受精卵(図2)をとふ化仔魚(図3)を得ることに成功した。
[成果の活用面・留意点]
 本研究で開発された成熟誘起技術により安定して多量の受精卵とふ化仔魚が得られるようになり、今後、仔魚の飼育技術が確立されればシラスウナギの生産が行えるようになることが期待される。また、全く未知のウナギの産卵生態や仔魚の発生など生物学的にも非常に興味深い謎が解明される。

[その他]
研究課題名:内分泌学的手法を応用したウナギの催熟
予算区分 :大型別枠研究(バイオメディア計画)
研究期間 :平成7年度(平成5〜9年度)
研究担当者:香川浩彦、太田博巳、田中秀樹、奥澤公一、黒川忠英
発表論文 :In vitro effects of 17α, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one on final
            maturation of oocytes at various developmental stages in the 
            Japanese eel, Anguilla japonica. Fish. Sci., 61.1012-1015,1995.
            Change infertilization and hatching rates with time after ovulation
            induced by 17α, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one in the Japanese 
            eel,Anguilla japonica.Aquaculture, 139, 291-301,1996

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