地球規模で分布するマイワシの集団構造に関する研究


[要約]
 世界で5つの水域に分かれて分布しているマイワシの集団構造を遺伝子レベルで検討し、集団間の独立性、類縁関係を明らかにした。この結果は分布域を通じて集団間に著しい混合があるとの定説を明確に否定するものである。
養殖研究所・遺伝育種部・遺伝資源研究室
[連絡先]  059658-6411
[推進会議] 水産養殖研究推進全国会議
[専門]     資源生態
[対象]     いわし
[分類]     研究

[背景・ねらい]
 国内・国外を通じて有数の漁獲量を持つマイワシは5つの水域に分かれて地球規模に分布している。マイワシは極めて大きな資源変動をすることで知られているが、その変動パターンには地理的に遠く離れた地域の集団間にも共通性がみられることが多い。世界のマイワシ集団の類縁関係については多くの仮説が提案されてきたが、Parrish他(1989)は地理的に離れた集団間にも遺伝的差異はほとんど検出されないことから、マイワシでは地球規模での混合が生じている可能性を指摘した。
 そこで、各水域からマイワシを採集しその集団構造をミトコンドリア(mt)-DNAの制限酵素切断長多型に基づいて分析した。

[成果の内容・特徴]

  1. ほぼ全ての水域でそこの集団に特徴的なハプロタイプ(遺伝子型)が認められた。この点からオーストラリアと南アフリカ以外の水域間では長期間にわたり交流がなかったことが明らかになり、従来の説を明確に否定することになった。
  2. 日本沿岸のマイワシ集団間には大規模な混合が生じているものとみられた。
  3. 同様に、オーストラリア沿岸の集団にも大規模な混合があるものとみられた。
  4. カリフォルニア沿岸とチリ沿岸の集団では現時点では赤道をこえた交流はないものの、氷河期等で海水温度の低下した際には交流があったことが推定された。
  5. 集団内の遺伝的変異性は水域により大きく異なり、カリフォルニアとチリで高いのに対し他の水域では有意に低く、特に日本沿岸のものではカリフォルニアの1/3以下であった。

[成果の活用面・留意点]

  1. マイワシの資源変動の分析に際しては、日本沿岸の集団を他の集団から明確に独立した一つの集団として扱う。
  2. マイワシとほぼ同様な分布パターンを持つ他の海産魚にも近似した現象が生じている可能性がある。
[具体的データ]
図1.近隣接合法によって得られた各ハプロタイプの類縁関係

[その他]
研究課題名:マイワシの集団構造
予算区分 :大型別枠「バイオコスモス計画」
研究期間 :平成元年〜7年
研究担当者:岡崎登志夫
発表論文 :Genetic relationships of pilchards(genus:Sardinops) with
            anti-tropical distributions. Marine Biology, (印刷中).

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