海産微生物を対象とする外来遺伝子発現ベクターの開発


[要約]
 養殖用ないし種苗放流用の仔魚の生産効率を高める餌料微生物(特に海洋細菌)の開発のための研究において海洋細菌細胞内に有用な遺伝子を運ぶベクターを開発した。本ベクターの構築により魚介類の成長促進効果を持ち、かつ病原菌を防除するような海洋細菌の開発が可能となった。
養殖研究所・環境管理部
[連絡先] 05996-6-1830
[部会名] 
[専門]  
[対象]  
[分類]  

[背景・ねらい]
 養殖および栽培漁業で使用する魚介類の種苗生産に必要な生物餌料に関する研究においては対象魚種の増加に伴い新たな機能をもった餌料微生物が求められている。必要とされる機能としては、(1)栄養的に優れていること、(2)病原性細菌の増加を抑えるなど飼育環境を改善する能力を有することなどがある。しかし、新たな生物餌料の探索に困難を伴う場合もあるため、遺伝子の導入による新餌料微生物の作出が期待されている。本研究では、このための基礎的技術である海洋微生物に適した遺伝子の運び屋「ベクター」の開発に取り組んだ。

[成果の内容・特徴]

  1. 多くの魚介類の消化器官より微生物を分離し、ベクターにつくりかえるのに適したプラスミドを選択した。この中で、サザエの消化器官から分離した細菌のプラスミドの大きさが適当であった。
  2. このプラスミドをとりだし、DNAの塩基配列を決定した。その結果、このプラスミドは6,847の塩基対を保持している事が明らかとなった。
  3. この塩基配列を既知の遺伝子の塩基配列と比較して解析したところ、同じ遺伝子は見つからず新規の遺伝子であることが判明した。
  4. さらに本プラスミドの複製起点を確定し、大腸菌のベクターに組み込んだ。この結果、このベクター(pMAF1)は海洋細菌と大腸菌用の二つの複製起点を保持することとなるため、いずれの細菌でも使用可能となる(表1)。
  5. このpMAF1を接合伝達法によって海洋細菌の中に導入したところ、ベクター内のマーカー遺伝子の機能を発現した(図1)。
  6. 本ベクターの開発により魚介類の成長促進効果を持ち、かつ病原菌を防除するような餌料微生物の開発が可能となった(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. DNA安全指針にのっとり、開発研究をより進める。
  2. 開発したベクターの小型化をはかる。
  3. ベクターに導入する有用遺伝子の研究を行う。
  4. ベクターを導入した餌料微生物の機能試験を完全閉鎖系水槽において行う。

図1図2表1


[その他]
研究課題名:新機能微小生物利用による魚介類生息環境の向上技術
予算区分 :大型別枠「バイオルネッサンス」
研究期間 :平成3年〜12年
発表論文等:平成7年8月、農水省勤務発明審査を経て特許を出願した。

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