クエ稚魚の共食い可能な最大サイズ推定
 クエ種苗生産および中間育成時の共食いによる減耗を防止するためには、科学的根拠に基づく選別基準により種苗をサイズ別に選別する必要がある。そこで本研究では小型水槽を用いた大小96 ペアのクエ種苗の飼育実験により、捕食-被食サイズの関係を求め、その結果より共食いによる減耗が激しい30-90mm の個体について共食い可能最大サイズ(=共食い防止の選別基準)の推定式を導いた。
担当者名 国立研究開発法人水産総合研究センター増養殖研究所 育種研究センター 育成グループ 連絡先 Tel.0972-32-2125
推進会議名 水産増養殖関係 専門 増養殖技術 研究対象 底魚 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
 クエを含むハタ類は種苗生産の後期から激しい共食いが起こり、その結果大きな減耗を生じることがある。共食いの生起には摂餌、光条件や飼育密度等さまざまな要因が関与するが、最も大きな要因は個体間の体サイズ差である。クエ種苗の生産現場では、共食いによる減耗を避けるため体サイズによる種苗選別が行われているが、その選別基準は多くの場合根拠が充分とは言えない。そこで本研究では選別基準の目安として、クエ種苗の自身の全長に対する共食い可能最大サイズを形態的特徴および飼育実験に基づき推定した。
[成果の内容・特徴]
 上浦庁舎において生産された日齢77 のクエ種苗を用いて、従来法に基づき捕食魚の口径が被捕食魚の体高を上回る場合に共食いが起こると仮定し、形態的特徴から共食い可能最大サイズを算出した。加えて日齢83-87のクエ種苗から任意の2 個体を選び、全長計測後に小型水槽に収容して24 時間飼育し、共食い生起の有無を観察した。観察は96 ペアについて行い、得られた結果について一般化線形線形モデル等を用いて解析した。全長35-70mm の種苗について、形態的特徴から算出された共食い可能最大サイズは自身の全長の80 パーセント程度であった。一方で、ペア飼育試験では96 ペア中46 ペアについて共食いが観察され、この結果から共食い可能最大サイズの推定式を求めた。推定式より算出された共食い可能最大サイズは種苗サイズの増大とともに自身の全長の95 から50 パーセント程度にまで大きく減少することが明らかとなった。
[成果の活用面・留意点]
 共食い可能最大サイズの推定式より、共食いを防止するための選別基準を提示することができた。また今回新たに得られた推定式は、従来の形態的特徴からの推定法を用いた場合よりもより正確な推定が可能であり、これを用いればより効率的な共食い防止の選別基準を提示できる可能性がある。ただし、今回の試験は小型水槽を用いた実験レベルの結果であり、今後は数十トン規模での大型水槽を用いた実証実験が必要である。
[その他]
研究課題名:ハタ類の健全種苗の量産技術の開発

研究期間:2011-2015

予算区分:交付金(一般研究)

研究担当者:井上誠章

発表論文等:N. Inoue, J. Satoh, T. Mekata, T. Iwasaki, K. Mori Maximum prey size estimation of longtooth grouper, Epinephelus bruneus, using morphological features, and predation experiments on juvenile cannibalism. Aquaculture Research 2014:1-7
[具体的データ]

研究概要

従来法である形態的特徴より推定した場合、全長50mm 以上の個体で共食い可能最大サイズを大幅に過大評価してしまう(黒点線)。一方で、本研究による推定方法では精度よく推定できている(赤線)




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