寄生虫(クドア・セプテンプンクタータ)に対するリスク管理に必要な技術開発
ヒラメに寄生する粘液胞子虫(Kudoa septempunctata)に起因する食中毒を防止するため、ヒラメ生産場における感染経路を推定するとともに、本クドアに未感染のヒラメを生産するための感染防除法を開発した。
担当者名 国立研究開発法人水産総合研究センター増養殖研究所 病害防除部 病原体研究グループ 連絡先 Tel.0972-32-2125
推進会議名 水産増養殖関係 専門 病理 研究対象 魚類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
新種のクドア属粘液胞子虫Kudoa septempunctata(以下クドア)に感染した養殖ヒラメの生食による食中毒が発生し大きな問題となった。ヒラメ養殖業界からは、クドア感染に対する対策が強く求められている。そこで、クドアの感染が認められた種苗生産場において感染経路を推定し、クドアの感染防除技術の開発を行った。
[成果の内容・特徴]
粘液胞子虫の生活環は、宿主から放出された粘液胞子が、交互宿主に取り込まれ、その体内で変態した後、放出された寄生体がヒラメに感染すると考えられている。クドアの感染が認められたヒラメ生産場の用水を3μmフィルターでろ過し、捕捉物をPCRで検査したところ微量のクドア遺伝子が検出されたことから、用水と共に寄生体が水槽内に持ち込まれヒラメに感染すると推察された(図1)。そこで、用水を砂ろ過処理あるいは紫外線照射(46mJ/cm2)処理しヒラメを飼育した結果、無処理の用水(生海水)で飼育した試験区ではクドアの感染が認められたのに対し、用水を砂ろ過あるいは紫外線照射処理した試験区ではクドアの感染が認められず、これらの用水処理が感染防除に有効であることが解った(表1)。また、異なる紫外線量で処理した用水でヒラメを飼育したところ、11mJ/cm2以上の紫外線量でクドアの感染を防除できることが解った。さらに、砂ろ過と紫外線照射処理を併用した用水でヒラメを1kL水槽の実用規模で飼育し、本用水処理がクドアの感染防除に有効であることを実証した(表2)。
[成果の活用面・留意点]
開発された感染防除法を種苗生産場や養殖場に導入することにより、クドアの感染のないヒラメを安定して生産できる。施設や機器の整備には設備投資が必要で、機器などの運用には定期的なメンテナンスにより能力の維持が必要である。
[その他]
研究課題名:「寄生虫(クドア・セプテンプンクタータ)に対するリスク管理に必要な技術開発」

研究期間:平成24年度〜平成26年度

予算区分:平成24年度〜平成26年度レギュレトリーサイエンス新技術開発事業(農林水産省消費・安全局)

研究担当者:西岡豊弘,佐藤 純,米加田 徹,森岡泰三,太田健吾,井上誠章,森広一郎(国立研究開発法人水産総合研究センター),横山 博,SHIN SANG PHIL(国立大学法人東京大学大学院)

発表論文等:
[具体的データ]




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