アユの生息環境における「大きな浮き石」の重要性
内水面の重要魚種のひとつであるアユの生息にとって重要な河川環境の抽出を行った。潜水目視および河川環境測定で得られたデータの解析から、1. 河床に占める直径25cm以上の石の比率が高い川ほど、2. 直径25cm以上の石に占める浮き石の個数の比率が高い川ほど、3. 川幅が狭い川ほど、種苗放流されたアユが高密度に生息していることが明らかになった。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所内水面研究部 内水面研究部 生態系保全グループ 連絡先 Tel.0288-55-0055
推進会議名 内水面関係 専門 漁場環境 研究対象 あゆ 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(3)水産生物の生育環境の管理・保全技術の開発
[背景・ねらい]
人間活動による河川環境の改変に伴い、魚類の生息環境は悪化している。そこで、本研究では、内水面における重要魚種のひとつであるアユについて、河川の物理的な環境変化が生息数に及ぼす影響の抽出とそれに基づく環境改善策の検討を行うことを目的とする。
[成果の内容・特徴]
2013年および2014年の7月から8月にかけて、北海道、本州および九州の13水系25地点において潜水目視(連続する瀬淵1セットの流芯を流下)によるアユの尾数カウントを行った。また、河川環境として、水深、川幅、流下する砂の重量、流下する砂の粒径、河床に占める直径25cm以上の石の個数の比率、および直径25cm以上の石に占める浮き石の個数の比率を測定した(表1)。調査場所として天然遡上のみられない水域を選定し、種苗放流されたアユに主眼を置いた。流程100m・幅2mあたりの観察尾数を説明する要因を検討するため、一般化線形混合モデルを用いて解析を行った。

その結果、放流量に関係なく、1. 河床に占める直径25cm以上の石の比率が高い川ほど、2. 直径25cm以上の石に占める浮き石の個数の比率が高い川ほど、3. 10〜60mの範囲では川幅が狭い川ほど、アユの生息数が多いことが明らかになった(表2、図1)。


[成果の活用面・留意点]
アユの生息にとって、直径25cm以上という大きな石が浮き石の状態で河床に存在することが大切であることがわかった。大きな石はアユの餌である藻類の付着基質になる。また、大きな石は緩流帯を作ることでアユの休憩場所を作る。さらに、浮き石はアユの隠れ場所を作る。浮き石状の大きな石はこれらのことを通してアユの生息に貢献していると考えられる。また、10〜60mの範囲では川幅が狭いほうがアユが定着しやすいと考えられる。このような河床条件を満たす場所に種苗を放流することにより、増殖効果の向上が期待される。
[その他]
研究課題名:不規則環境変化が生物多様性に及ぼす影響評価技術の開発

研究期間:平成23〜27年度

予算区分:水研センター 一般研究

研究担当者:坪井潤一・松田圭史

発表論文等:該当なし
[具体的データ]




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