アサリ垂下養殖における基質の検討 |
アサリ垂下養殖に用いる基質の量や種類がその成長に及ぼす影響を検討した結果、基質の量を増しその深さを深くした試験区で成長が優れることや、一般的に用いられる砂や礫の代わりに軽石を用いても同水準のアサリの成長が確保されることが明らかとなった。これらの結果から軽量な軽石を用いて基質の深さを増すことで、付加価値の高い大型のアサリの生産をより効率的におこなうことが出来るだろう。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所 養殖システム部 環境管理グループ |
連絡先 |
Tel.0599-66-1830 |
推進会議名 |
水産増養殖関係 |
専門 |
増養殖技術 |
研究対象 |
あさり |
分類 |
普及 |
「研究戦略」別表該当項目 |
4(1)漁場環境の保全と基礎生産力向上のための技術開発 |
[背景・ねらい] 全国的にアサリ漁獲量が低迷するなか、アサリの垂下養殖を行い地域の特産品として販売する動きが高まっている。しかし、アサリは単価が安く、さらに養殖資材への投資などが必要なため、より付加価値の高い大型のアサリの生産を通じ、高い単価で出荷を実現することが、その成功には不可欠である。アサリ垂下養殖の更なる効率化のために、養殖に用いる基質の容量がアサリの成長に与える影響を検証するとともに、容量を増した場合におこる養殖器材の重量を抑制するために、より軽量な基質材を用いた際のアサリへの影響を検証する試験を実施した。
[成果の内容・特徴] アサリの成長は、基質の深さが浅い試験区にくらべ深い試験区において優れていた。また、基質の種類
(礫と軽石)
によるアサリの成長の有意な差は検出されなかった。これらの試験結果から、付加価値の高い大型のアサリを効率的に生産するには、基質の深さに配慮した垂下養殖が適当であり、垂下量の抑制や作業負担の増加につながる基質の増加による重量増は、砂や砂利に比べ軽量な軽石を基質に用いることで緩和できることが明らかとなった。
[成果の活用面・留意点] 軽量な軽石を基質として用いることで、良好なアサリの成長が期待できる基質の深さを確保することが容易となり、付加価値の高い大型のアサリの効率的な生産に貢献することが期待される。一方で、本試験は、静穏な海域で実施しており、より波浪の大きい海域では、軽量な基質を用いた養殖が同様に適用できるかは未知数であり、その検討が必要である。
[その他] 研究課題名:「地域特産化をめざした二枚貝垂下養殖システムの開発」
研究期間:平成24〜26年度
予算区分:農林水産業・食品産業科学技術研究推進委託事業
研究担当者:長谷川夏樹,日向野純也,藤岡義三,石樋由香,水野知巳,森田和英,高木儀昌
発表論文等:水産増殖(印刷中)
|
[具体的データ] |
|
図1. 3
gのアサリを用いた飼育試験の結果,7ヵ月後に干潟での網袋飼育試験区で5 g,基質の深さが浅い垂下養殖試験区では8
g,深い試験区では10 gに成長し,基質の深さを増すことでより良好な成長が確保されることが明らかとなった。
| |
|
図2.
基質として礫と軽石を用いてコンテナ容器でのアサリ垂下試験の結果,平均個体重量7
gであったアサリは4ヵ月後にはいずれの基質の試験区においても9
gに達し,基質の種類による有意な成長差は確認されなかった。
| |
|
| |