マアナゴの産卵場所を沖ノ鳥島南方で発見 |
マアナゴの孵化後間もない仔魚(プレレプトセファルス)を採集したことにより、産卵場所の一つが沖ノ鳥島南方の九州-パラオ海嶺上の海域にあると特定した。今回の発見は、東アジア全体でのマアナゴ資源の変動機構を解明する調査研究へとつながり、今後の資源回復に向けた管理を策定するための貴重な科学的根拠となるものと期待される。
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担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所横須賀庁舎 資源生産部 沿岸資源グループ |
連絡先 |
Tel.046-856-2887 |
推進会議名 |
中央ブロック |
専門 |
資源生態 |
研究対象 |
他の底魚 |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] ・マアナゴは、日本のみならず、韓国や中国でも漁獲され、東アジア全体での水産重要種である。
・漁獲量は近年減少しており、我が国では、1995年以降現在までの間に半減している。国内での主な漁場は、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、日本海西部、東北地方沿岸などで、多くの地域では、資源回復を目指して、小型魚の漁獲を規制するなどの資源管理の取り組みが進められている。
・効果的な資源管理を行うためには、産卵親魚を保護するなどの、資源全体の底上げを図る対策が有効であるが、これまで成熟した親魚が漁獲されたことはなく、いつどこで産卵が行われているかなど、基本情報といえるマアナゴの生活史はほとんど解明されていなかった。
・本研究では、マアナゴの初期生活史、産卵場所に関する情報を得ることを目的とした。
[成果の内容・特徴] ・マアナゴの孵化後間もない仔魚(プレレプトセファルス)計8尾を採集することに初めて成功した。そのうち最も若い段階のもの(図1)は、孵化後日数3-4日と推定された。種はDNA鑑定によって確認した。
・最も若いマアナゴ仔魚採集場所は、沖ノ鳥島から約380
km南の海域で(図2)、仔魚の採集位置と同時に観測した海流から計算すると、沖ノ鳥島南方の九州-パラオ海嶺上の海域がマアナゴ産卵場所の一つと特定された。また、仔魚の採集時期から、産卵期は少なくとも6月から9月の間であることが明らかになった。
[成果の活用面・留意点] ・産卵場の発見により、マアナゴ資源の変動要因を解明する調査研究への糸口が得られた。
・外洋での産卵場の発見は、東アジア全体で同一資源を利用している可能性が高いことを示しており、資源回復を図るためには、これまで実施されている漁場単位の資源管理を継続したうえで、将来的には、より広域な枠組みの中での資源管理を考える必要があることを示唆している。
[その他] 研究課題名:本州中部内湾域における重要水産資源の培養と合理的利用
研究期間:平成23年度〜27年度
予算区分:交付金一般研究
研究担当者:黒木洋明、鈴木重則、渋野卓郎、児玉真史、青木一弘
発表論文等:
Kurogi
H et al. (2012) Discovery of a spawning area of the common Japanese conger
Conger myriaster along the Kyushu-Palau Ridge in the western North
Pacific. Fish Sci 78, 525-532.
黒木洋明 (2012) 江戸前の主役、穴子も大回遊 〜
沖ノ鳥島の南方にあったマアナゴの産卵場. 科学, Vol.82, No.8, 891-894.
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[具体的データ] |
図1 マアナゴのプレレプトセファルス
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これまで採集された中で最も若い個体で、全長5.8mm、ふ化後日数推定3〜4日、顎や歯がまだ未形成である。この個体の採集位置と海流から、マアナゴの産卵場所は九州-パラオ海嶺上と推定された。スケールバーは1mm。
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図2 マアナゴの分布域
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マアナゴは日本沿岸から朝鮮半島沿岸、東シナ海の東アジア全体に広く分布している。丸印は、ふ化後3〜4日の仔魚(プレレプトセファルス)の発見場所で、沖ノ鳥島の南方約380km(北緯17度、東経136度)。
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