[背景・ねらい] 魚粉削減飼料の開発が進められているが、サケ科魚類では大豆油粕の配合により胆汁酸量が減少するなどの生理異常が見られ、飼育成績が低下することが問題となっている。先に大豆油粕の発酵処理によりニジマスの生理異常と飼育成績が改善されることを報告したが、発酵処理により大豆タンパク質が低分子化しており、これが生理異常の改善に関与しているのではないかと推察された。本研究では、大豆タンパク質の分子量がニジマスの生理状態に及ぼす影響を検討した。
[成果の内容・特徴] 魚粉主体の飼料(FM)と、大豆タンパク質(大豆油粕、SBM;分離大豆タンパク、SPI)および分子量の異なる市販大豆ペプチド(ハイニュートDH、
DL、 D1、
AM)(図1)を配合した無魚粉飼料を与えたところ、大豆タンパク質の低分子化により胆のうの胆汁酸量が増加し(図2)、タウロコール酸(C-Tau)の割合が増加した(図3)。また、直腸粘膜上皮の空胞変性などの組織異常も改善した(図4)。一方,サポニン含量の低い大豆ペプチドAMに大豆サポニンを添加したところ(AMS)、胆汁酸量がやや減少した。これらのことから、大豆油粕を与えたニジマスに生じる生理異常には、大豆タンパク質の分子量とともに、大豆サポニンが関与していることが示唆された。
[成果の活用面・留意点] 大豆油粕の給与による腸管組織の異常や胆汁酸の減少は、大西洋サケを含むサケ科魚類に共通して報告されていることから、他のサケ科魚類においても、発酵や酵素処理による大豆タンパク質の低分子化や、アルコール洗浄によるサポニンの除去が、大豆油粕の栄養化改善に有効であることが示された。
[その他] 研究課題名:マス類等の淡水魚における低・無魚粉飼料の利用性の検討
研究期間:H23〜H27
予算区分:運営費交付金(一般研究)
研究担当者:山本剛史、古板博文、杉田 毅、村下幸司、松成宏之、岡本裕之
発表論文等:T.
Yamamoto, K. Murashita, H. Matsunari, T. Sugita, H. Furuita, Y. Iwashita,
S. Amano, N. Suzuki Influence of dietary soy protein and peptide products
on bile acid status and distal intestinal morphology of rainbow trout
Oncorhynchus mykiss. Fish. Sci. DOI 10.1007/s12562-012-0551-z. |