生体内寿命の長い組換えウナギ生殖腺刺激ホルモンの産生とその人為催熟への応用
 哺乳類細胞を用いて、2種類の組換えウナギ生殖腺刺激ホルモン(GTH)の大量生産系を確立した。また、組換えGTHを作製する際に、タンパク質の生体内寿命に関与する糖鎖結合部位を付加することにより、生体内寿命の長い組換えGTHの作製することに成功した。また、生体内寿命の長いGTHは、成熟促進効果が高く、未熟雄ウナギに投与する事により、全精子形成過程を誘導、精液を得る事が出来た。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所玉城庁舎 養殖技術部 繁殖グループ 連絡先 Tel.0596-58-6505
推進会議名 水産増養殖関係 専門 増養殖技術 研究対象 魚類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
 ウナギは、飼育環境下で成熟しないため、これまで他の動物種由来の成熟誘導ホルモン(GTH)等を用いて人為催熟を施し、種苗生産を行ってきたが、得られる精子や卵の質は個体間で大きく変動し、安定して十分な結果が得られない。その原因として、異種のGTHを使用していることが指摘されて来た。そこで、成熟促進効果の高いウナギ自身のGTHを大量生産を試み、その人為催熟への応用の可能性を検討することを目的とした。
[成果の内容・特徴]
 2種のウナギGTH(濾胞刺激ホルモン:FSHおよび黄体形成ホルモン:LH)の発現ベクターを構築、哺乳類細胞に導入することにより、組換えウナギFSHおよびLHを得ることに成功した。また、組換えFSHおよび LHに、タンパク質の生体内寿命に関与する糖鎖結合部位(hCTPおよびeCTP)を挿入した改変組換えGTH(GTH-hCTPおよびGTH-eCTP)も作製した。これら組換えウナギGTHを未熟雄ウナギに1mg/kg-体重で投与した後、その血中動態を調べた。その結果、糖鎖結合部位を挿入した改変GTH、特にGTH-hCTPで、その血中レベルが高く、生体内に長く残留することが明らかとなった(図1)。更に、これらGTHの成熟促進効果を調べるため、各GTHを未熟雄ウナギに週1回、6週間、投与した。投与後、排精の有無を確認すると共に、精巣を摘出、生殖腺体指数(GSI:生殖腺重量/体重X100)を算定した。対照群としてはリン酸緩衝液を投与する群を設けた。その結果、生体内寿命が長かったGTH-hCTP投与群で成熟促進効果が高く、排精に至る個体が認められた。また、GTH-hCTP投与群のGSIは、対照群に比べ数十倍の高値を示した(図2)。以上、遺伝子工学的手法を導入することで、ウナギGTHの大量産生が可能となった。また、生体内寿命を延長化したGTHは成熟促進効果が高く、ウナギの全精子形成過程を誘導出来ることが示された。
[成果の活用面・留意点]
魚類の人為催熟は主に哺乳類の成熟誘導因子を用いて行われているが、得られる配偶子の質が安定しない等の問題が認められる。ウナギで確立した本法を他魚種に応用することにより、安定して良質の配偶子を自在に得ることが出来る、新たな魚類の人為催熟法の確立が強く期待される。
[その他]
研究課題名:ウナギ種苗生産技術の開発

      組換えニホンウナギ生殖腺刺激ホルモンの産生および卵形成における機能解析

      生体内寿命が長い魚類成熟誘導因子の作製および同ホルモンによる人為催熟技術への応用

研究期間:H20-23、H22-24、H23

予算区分:委託プロジェクト研究、科学研究費補助研究、交付金(所内シーズ研究)

研究担当者:風藤行紀、玄浩一郎、奥澤公一、山口寿哉、野村和晴、今泉均、神保忠雄、増田賢嗣

発表論文等:特に無し
[具体的データ]














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