増殖過程にあるコイヘルペスウイルス(KHV)の検出法の開発 |
KHVターミナーゼ遺伝子のエキソン・イントロン構造部位でプライマーを設計することにより、KHV
mRNAを特異的に検出できるRT-PCR法を開発した。本法は、魚体内でのKHV増殖の有無を判定する一手段に成り得る。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所 魚病診断・研修センター 魚病診断グループ |
連絡先 |
Tel.0599-66-1879 |
推進会議名 |
水産増養殖関係 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
ウイルス |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] 輸出入時の防疫構築において、病原体の宿主域は重要な要因のひとつであり、OIE(国際獣疫事務局)では宿主を「病原体が増殖可能な動物」と定義している。近年、キンギョがKHVの宿主か否かが国際的に議論されているが、現存のPCR法ではウイルスゲノムの存在を証明できるが、ウイルスの複製や増殖の有無は分からない。そこで、ウイルス複製の指標となるmRNAを特異的に検出するRT-PCR法の開発を試みた。
[成果の内容・特徴] 1)プライマーはターミナーゼ遺伝子(ゲノムをウイルスカプシド内へ導入する遺伝子)のエキソン・イントロン構造部位で設計した。すなわち、プライマーセットAでは、上流プライマー(F3)がエキソン1とエキソン2をまたぐように設計し、プライマーセットBでは上下流プライマーがイントロン1を挟むように設計した(図1)。
2)KHVゲノムDNAとmRNAが混入するテンプレート1(DNA量RNA量)およびDNAのみを含むテンプレート3について、開発した両プライマーセットを用いてRT-PCRを行った結果、プライマーセットAではmRNAのみを検出でき、プライマーセットBではゲノムDNAとmRNAの両増幅バンドを、分子量により区別して検出できた(図2)。
3)ウイルス液に浸漬したコイの体表からウイルスの検出を試みた場合、従来のPCRでは浸漬直後の体表からPCR陽性バンドが検出されたが、プライマーセットAを用いた本RT-PCR法では検出されなかった(図3)。すなわち、本RT-PCR法は体表に付着しただけのウイルスゲノムDNAは検出せず、体内で増殖しているウイルスのみを検出した。
[成果の活用面・留意点] 本RT-PCR法は、魚体内でのウイルス増殖過程を検知できることから、宿主域を決定する際に有効な手段となる。また、感染耐過魚体内に残存するウイルスについて、増殖過程にあるか否かを判定できる。
[その他] 研究課題名:PCRによるキャリア検出技術の開発
研究期間:H19〜22年度
予算区分:技術競争的資金(コイヘルペスウイルス病のまん延防止技術の開発)
研究担当者:湯浅 啓、栗田 潤、川名 守彦、桐生 郁也、大迫 典久、佐野元彦
発表論文等:Development
of mRNA-specific RT-PCR for the detection of koi herpesvirus (KHV)
replication stage, Disease of Aquatic Organisms, 100:11-18 (2012).
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[具体的データ] |
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