イセエビ幼生飼育技術のケブカイセエビ幼生への応用
試験規模でふ化から稚エビまで70%以上の生残率が安定的に得られるようになったイセエビ幼生の飼育技術を幼生期間がより短いとされるケブカイセエビ幼生の飼育に応用可能かどうか検証した。その結果,稚エビまでの生残率は約40%が得られ,プエルルスまでのフィロソーマ幼生期間が平均126日を記録したことから,イセエビ幼生の飼育技術が応用可能なことが明らかになった。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所 資源生産部 沿岸生態系グループ 連絡先 Tel.0558-65-1185
推進会議名 中央ブロック 専門 増養殖技術 研究対象 いせえび 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
日本ではイセエビの幼生を対象とした飼育研究の歴史は100年以上にも上るが,イセエビ(Panulirus)属幼生の飼育は非常に困難であり,過去にプエルルスまで飼育に成功しているのは,イセエビ(1989年),ケブカイセエビ(1997年),カノコイセエビ(2000年),シマイセエビ(2006年),P. argus(2008年)である。しかし,生残率の向上や幼生期間の短縮技術については,イセエビ以外では検討されていなかった。そこで,近年我々(南伊豆栽培漁業センター)が開発したイセエビ幼生の安定した飼育技術を他種に応用可能かどうかを検証することとした。
[成果の内容・特徴]
イセエビ幼生の飼育技術は2007年までに高度化が図られ,試験規模においてはふ化から稚エビまで70%以上と高い生残率及び安定した飼育技術が開発されたことから,その飼育技術をケブカイセエビに応用可能かどうか確認するために,飼育試験を実施した。その結果,ふ化から稚エビまでの生残率は約40%であり,プエルルスまでのフィロソーマ幼生期間は126.5(103〜192)日で,1997年に実施したケブカイセエビ幼生における飼育試験の生残率1%未満,幼生期間200.7(166〜235)日に比べて,生残率は飛躍的に向上し,幼生期間も2カ月以上短縮した。現在のイセエビ幼生の飼育技術は,同属のケブカイセエビにも適用可能であり,幼生期間を大幅に短縮できることが分かった。今回の成果により幼生期間の大幅な短縮が図られたことから,幼生期間が比較的短いとされる南方系イセエビ類の人工生産による養殖技術開発の今後の進展が期待される。
[成果の活用面・留意点]
イセエビ属の中でも南方系の種であるケブカイセエビの幼生飼育において幼生期間の大幅短縮及び高生産率を得たことは,最も高価格で流通している南方系イセエビ類のニシキエビにも十分応用可能なものと考えられる。
[その他]
研究課題名:イセエビ資源生態調査と健全種苗の育成に関する基礎技術の開発

研究期間:H17-H22年度

予算区分:一般研究

研究担当者:村上恵祐

発表論文等:K. Murakami and S. Sekine Application of advanced rearing technology of Panulirus japonicus phyllosoma to P. homarus homarus larvae. The 9th International Conference and Workshop on Lobster Biology and Management, Bergen, Norway, 19-24 June, 2011.
[具体的データ]




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