[背景・ねらい] 我が国の特定疾病であり、OIE(国際獣疫事務局)のリスト疾病でもある重要疾病VHS(ウイルス性出血性敗血症)の原因ウイルス(VHSウイルス)は、現在世界中で9つの遺伝子型が分離されている(図1)。これまで日本で分離されたウイルスは、1株のIb型を除き、すべてIVa型である。新たな遺伝子型のウイルスの侵入を防ぐためには既存IVa型と他の型とを迅速かつ簡便に診断する手法の確立が急務である。また近年、OIEの水生動物衛生規範が改正され、世界的にも本ウイルスの遺伝子型別管理が検討されており、遺伝子型の簡易識別手法が望まれている。そこで、本研究ではVHSのOIEリファレンスラボラトリーであるデンマークのオーレセン博士と共同し、モノクローナル抗体によるVHSウイルスの遺伝子型識別手法の開発を実施した。
[成果の内容・特徴] 作製した8つの抗体と既製の診断用抗体(IP5B11;VHSリファレンスラボラトリーで作製・配布)とを組み合わせることで、現在世界で分離されるすべての遺伝子型を識別できた(図2及び図3)。これら遺伝子型識別用の8つの抗体は、7つがNタンパク質、1つがPタンパク質をそれぞれ認識していた(図4)。本手法により、これまで塩基配列の解析により数日を要してきたVHSウイルスの遺伝子型識別を、最短1時間以内に且つ簡易に行うことが可能となった。
[成果の活用面・留意点] 本手法は、国内防疫のみならず、世界中での利用が見込まれる。また、今回作製したモノクローナル抗体をツールとすることで、各遺伝子型の進化や分布域の広がり、遺伝子型間の病原性の違い等の解析が進むと考えられる。
[その他] 研究課題名:モノクローナル抗体によるウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)遺伝子型識別のための日丁国際共同研究
研究期間:H21-H22
予算区分:交付金
研究担当者:伊東尚史・栗田 潤
共同研究者:Niels
Jorgen Olesen (デンマーク工科大学)
発表論文等:T. Ito, N. J. Olesen, H. F. Skall,
M. Sano, J. Kurita, K. Nakajima, T. Iida (2010) Development of a
Monoclonal Antibody against Viral Haemorrhagic Septicaemia Virus (VHSV)
Genotype IVa. Dis Aquat Org, 89, 17-27
T. Ito, J. Kurita, M. Sano,
T. Iida, H. F. Skall, N. Lorenzen and N. J. Olesen (2009) Distinction
between Genotypes of Viral Haemorrhagic Septicaemia Virus (VHSV) using
Monoclonal Antibodies. EAFP 14th International Conference, 2009,
Sep.
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