海洋におけるウナギの産卵回遊行動 |
降りウナギに発信機を装着し、産卵場(北緯12〜14度、東経141〜142度)とその西方海域(北緯13度、東経138度)及び北方海域(北緯20度、東経143度)で計5個体を放流、追跡した。2日から1週間の追跡を行った結果、昼間の遊泳水深が日ごとに深くなり7日後には最深となる690mに達した。ウナギの遊泳水深での流向流速を分析した結果、ウナギは潮流に流されながら移動していることが示された。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所 資源生産部 沿岸生態系グループ |
連絡先 |
Tel.046-856-9408 |
推進会議名 |
中央ブロック |
専門 |
資源生態 |
研究対象 |
うなぎ |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] ウナギの生態解明は近年飛躍的に前進したが、親魚の産卵回遊時における行動生態や回遊経路に関する情報は全く無い。河川で捕獲した天然降りウナギに超音波発信機(ピンガー)を装着して放流、追跡することにより、海洋生活期における行動生態の把握及び回遊経路に関する情報を得ることを目的とした。
[成果の内容・特徴] 全5個体ともに顕著な日周鉛直移動を示した。夜間の平均遊泳水深は180mであった。一方、昼間の遊泳水深は日ごとに深くなり、7日間追跡した個体では最終日に最大水深(690m)に達した(図1)。1日における水温差は20℃以上になることが確認された。ほとんどの個体は西に移動した(図2)。またウナギの移動方向と遊泳水深における潮流向はほぼ同じであり(図3)、潮流に流されているものと考えられた。
[成果の活用面・留意点] ウナギ天然親魚は浅深移動によって20℃以上の水温変化を1日のうちに経験している可能性が高く、人工親魚養成と催熟技術開発のための重要な情報となる。潮流に逆らって遊泳はしないことが示されたことから、天然親魚は黒潮続流から南下するルートを辿る可能性が高いものと考えられる。
[その他] 研究課題名:天然ニホンウナギの資源生態に関する研究
研究期間:平成21年〜22年
予算区分:運営費交付金
研究担当者:張
成年・山本敏博・黒木洋明(増養殖研究所・資源生産部)・渡邊朝生・岡崎誠(中央水産研究所・海洋・生態系研究センター)
発表論文等:張
成年 (2011): 謎多きウナギの生態. 現代化学 485号: 47-51.
張 成年・山本敏博・黒木洋明・田中秀樹・岡崎
誠・渡邊朝生・望岡典隆・真鍋諒太朗・青山 潤・塚本勝巳・堀江則行・川合美保 (2011): 西マリアナ海嶺南部海域で放流したウナギの遊泳行動.
平成23年度日本水産学会秋季大会
山本敏博・張 成年・黒木洋明・岡崎 誠・渡邊朝生・田中秀樹・望岡典隆・真鍋諒太朗・青山
潤・塚本勝巳・川合美保・堀江則行 (2011):
ウナギの産卵場近海における回遊と遊泳行動の把握-Iピンガー追跡調査の概要と、養殖ウナギと天然ウナギの遊泳行動.
平成23年度日本水産学会春季大会
岡崎 誠・張 成年・黒木洋明・山本敏博・渡邊朝生・田中秀樹・望岡典隆・真鍋諒太朗・青山
潤・塚本勝巳・川合美保・堀江則行 (2011): ウナギの産卵場近海における回遊と遊泳行動の把握-II 天然ウナギの遊泳行動と海洋環境.
平成23年度日本水産学会春季大会 |
[具体的データ] |
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