ウイルスフリー親魚選別のためのNNV高感度検出法の確立
 ウイルス性神経壊死症(VNN)の垂直感染防止対策として、FastリアルタイムPCR法およびリアルタイムLAMP法による親魚からのウイルス性神経壊死症原因ウイルス(NNV)の検出を試みた。FastリアルタイムPCR法は従来法よりも10倍高い検出感度を示した。従来法で陰性であった328検体のうち8検体よりFastリアルタイムPCR法による陽性反応が確認された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター増養殖研究所 病害防除部  病原体研究グループ 連絡先 Tel.0972-32-2125
推進会議名 水産増養殖関係 専門 病理 研究対象 魚類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
 ウイルス性神経壊死症(VNN)の垂直感染防止対策として、親魚生殖線のPCR検査や配偶子洗浄等が行われている。しかしながら、種苗生産過程の後期頃にVNNが発症する事例が後を絶たず、極めて微量のウイルスによる感染が引き起こされていると考えられる。そこで、本研究ではVNN原因ウイルス(NNV)の高感度検出法を開発し、親魚からのウイルス検出率を従来のPCR法と比較した。
[成果の内容・特徴]
 高効率な遺伝子増幅法であるFastリアルタイムPCR法およびリアルタイムLAMP法によるNNVの検出を試みた。既存のNNVの遺伝子情報よりRNA-dependent RNA polymerase遺伝子が高い保存性を有することから、本遺伝子を検査の標的とし、新たなPCR用プライマー、TaqManプローブおよびLAMP法用プライマーセットの設計を行った。定量検出のため標的領域を組み込んだプラスミドを作製し、総塩基数およびDNA濃度よりコピー数を算出し、0.5×10の1乗 〜10の7乗(copies/μl)に調整した。これらのスタンダード系列を用い、FastリアルタイムPCR法およびLAMP法の検出限界および定量性を解析したところ、検出限界はそれぞれ10の1乗および10の1乗〜2乗コピーであり、定量性を示す決定係数はそれぞれ0.99および0.95と非常に高い値を示した(図1)。このように両者を比較すると、FastリアルタイムPCR法はリアルタイムLAMP法よりも検出感度および定量性の点において優れていた。なお、検査に要する時間はどちらも約30分間であり、いずれも非常に迅速な検出が可能であった。VNN感染魚由来のTotal RNAの10倍希釈系列を用いた検査の結果、FastリアルタイムPCR法は従来法よりも10倍高い検出感度を示した(図2)。また、従来のPCR法で陰性と判断された2010および2011年度に採集した親魚生殖線を本FastリアルタイムPCR法を用いて再検査した結果、従来法で陰性であった328検体のうち8検体より陽性反応が確認された。
[成果の活用面・留意点]
 VNNの新規高感度検出法は従来法に比べ検出感度が約10倍高く、さらに迅速検出が可能である。本法を親魚選別に利用することで、これまでは検出できなかった微量のウイルスを検出することが可能になり、垂直感染のリスクを減らすことができる。本法は検出感度が非常に高いため、コンタミネーションによる誤判定をもたらす可能性があり、試薬調整と拡散抽出において場所や器具を分ける等の配慮が必要である。
[その他]
研究課題名:ハタ類のVNN、クルマエビのWSDの垂直感染の防止技術の開発

研究期間:平成23−27年度

予算区分:交付金(一般研究)

研究担当者:米加田 徹・佐藤 純・佐古 浩(水研センター)

発表論文等:投稿準備中
[具体的データ]




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