抗体・プロテインチップを用いたヒラメの健康管理技術の開発 |
ヒラメは主要な養殖魚であるが、魚病被害が多く、健康状態の把握による感染症監視技術の確立が求められている。そこで、「抗体・プロテインチップ」を応用した診断ツールの開発を試みた。感染で量的変動を示す血液中の生体成分を検出する抗体を作製し、チップ化した。また、病原体の抗原を特定し、人工的に合成した病原体マーカーをチップ化した。これにより、ヒラメの感染症診断が可能になった。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城分室 病害防除部 健康管理研究グループ |
連絡先 |
Tel.0596-58-6479 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
ひらめ |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] ヒラメは主要な養殖魚ですが、魚病被害が多く養殖経営を圧迫しています。さらに、食品への安心・安全への関心が高まり、抗菌性物質等の薬剤に依存しない養殖生産が期待されています。魚病被害を軽減し、薬剤の使用を減少させるには、養殖魚の健康状態を把握することが重要で、健康診断及び魚病の早期診断技術を確立することが生産者から強く求められています。
[成果の内容・特徴] ヒラメの感染状態を検出する「抗体チップ」、「プロテインチップ」の開発を行ないました。魚病診断への応用は初の試みです。「抗体チップ」は基盤の上に、病気になった魚の血液中に放出されたタンパク質に特異的に結合する抗体が並べられています。ヒラメから採取した血漿を専用の試薬とともに抗体チップと反応させて、蛍光スキャナーという機器で読み取ります(図1)。各抗体の発色パターンから、バイオマーカーの量の変動が検出され、「ウイルス感染」あるいは「細菌感染」が起きているかを診断でき、その感染の進行度合も推測することができます(図2)。「プロテインチップ」は小さなシートで、その上には、病原体の数種のタンパク質が並べられており、魚の血液中の各病原体に対する抗体を検出することができます(図3)。つまり、ヒラメが感染した病気の種類を判定することができるのです。魚の血漿を専用の試薬とともにプロテインチップと反応させると、感染した病気の種類に応じて白色だったチップの上に発色が現れます。今回開発されたプロテインチップでは、ヒラメに大きな被害を及ぼすエドワジエラ症、レンサ球菌症とVHSウイルス症を検出することができます。図4のように、エドワジエラ症に感染させたヒラメでは左側に、レンサ球菌症に感染させたヒラメでは右側に発色が現れて、それぞれの病気が正しく診断されます。
[成果の活用面・留意点] ヒラメを生かしたまま少量の血液を採取し、チップに反応させることで、病気感染の兆候や病原体の感染履歴を短時間で診断することが可能になりました。これにより、病気の蔓延防止、被害軽減への効果が期待されます。今後、この診断技術の簡略化を検討していく予定です。
[その他] 研究課題名:抗体・プロテインチップを用いたヒラメの健康管理技術の開発
研究期間:2007〜2009
予算区分:受託経費(新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業)
研究担当者:中易千早・松山知正・坂井貴光・釜石 隆・乙竹 充(養殖研)・三吉泰之・福田 穣(大分県農林水産研究指導センター水産研究部)・倉田 修(日本獣医生命科学大学)
発表論文等:1.「Identification
of major antigenic proteins of Edwardsiella tardarecognized by
Japanese flounder antibody」:J.Vet.diag.invest., 21, 504-509,
(2009)、2.「抗体チップ・プロテインチップを用いた養殖ヒラメの健康診断技術の開発」:月刊養殖、6月号(2009) |
[具体的データ] |
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