伊勢湾におけるアサリ浮遊幼生分布から産卵場と着底場を探る
伊勢湾におけるアサリ浮遊幼生の分布を調べ,幼生の殻長組成と水温から産卵日を推定した。幼生の浮遊期間における湾内の流動を数値計算し,採集日の幼生の分布を起点として,逆追跡により産卵場所を,順追跡により着底時の到達場所を推定した。計算によって湾奥が主産卵場に,南西部が主着底場になっていると推測された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産システム部 増養殖システム研究グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖部会 専門 増養殖技術 研究対象 あさり 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
伊勢湾におけるアサリ生産量はピーク時の1/3程度に減少し,アサリの資源回復と生態系サービスの向上が望まれている。本研究では,伊勢湾におけるアサリ資源回復のため,浮遊幼生の来遊調査と数値計算から親個体群の配置計画を検討するとともに,アサリ漁場における生産力と流域管理の関係を検討する。
[成果の内容・特徴]
1)伊勢湾におけるアサリ幼生の分布調査(2008年5-12月)から6月 (660 ind kL-1) と11月(450 ind kL-1) をピークとしたアサリ幼生の出現がみられ(図1),年2回の主産卵期が確認された。観測された最大幼生密度は,国内のその他海域および伊勢湾での1990年代前半の観測値に比べて低く,近年の周防灘での観測値と同水準であった。

2)2008年4-8月の湾内流動シミュレーションに上記幼生分布を反映させ,幼生の移送分散過程の数値計算(5-7月)を行い,逆追跡により産卵地域を,順追跡により着底時の到達地域を推定した。なお,ここでは浮遊幼生の死亡率は考慮しなかった。

3)数値計算の5-7月の浮遊幼生の産卵地域の検討では,水深10m以浅の沿岸域に回帰した個数の割合は24-76%であり,このうちの7割以上が湾奥部(桑名・名古屋港周辺)を主とした湾北部の沿岸であった(図3)。着底地域の検討では,湾西部から南西部沿岸が主要な幼生着底地域となっている可能性が示唆されたが,沿岸域に到達しないあるいは湾外へ流失する無効分散も41-85%に達した(図3下)。
[成果の活用面・留意点]
・湾内の各地域を,産卵場あるいは着底場としての重要性により区分できる。

・主産卵場における母貝の資源保護と生育環境の保全が提案される。

・幼生の到達場における着底促進や稚貝の移動分散抑制のための施設設置等,アサリ増養殖のための環境改善方策が提案される。
[その他]
研究課題名:沿岸環境修復のための浅海域機能修復技術開発−二枚貝浮遊幼生の来遊特性−

研究期間:H.18-23

予算区分:他省庁の競争的資金

研究担当者:日向野純也,長谷川夏樹,藤岡義三,石樋由香,(協力者:三重県水産研究所 水野知巳,程川和宏,藤原正嗣,藤田弘一)

発表論文等:
[具体的データ]




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