ヒラメ細菌感染症(連鎖球菌)に対する抵抗性関連領域特定のための連鎖解析 |
本研究では、連鎖球菌症に対するヒラメの抵抗性遺伝子座領域の特定を目標として、作成した高密度遺伝子連鎖地図を参照に、F1家系における連鎖解析により、4連鎖群において細菌感染抵抗性に関連する候補領域を特定した。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産技術部 育種研究グループ |
連絡先 |
Tel.0599-66-1830 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
水産遺伝育種 |
研究対象 |
ひらめ |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
5(1)水産生物の機能の解明及びゲノム関連の研究開発 |
[背景・ねらい] Streptococcus iniaeを原因とする連鎖球菌症は、ヒラメ養殖において、魚病被害がみられる重要疾病である。本研究では、DNAマーカーによる遺伝連鎖解析を行うことにより、連鎖球菌症に対するヒラメの抵抗性遺伝子座領域を特定し、これら候補領域の位置情報を指標とした連鎖不平衡を利用するマーカー選抜育種、及び他の表現形質の重複化によるテーラーメイド育種を目標としている。
[成果の内容・特徴] 1.連鎖球菌症に対して、比較的高い生存率を示す系統<YR−1>と、高い死亡率を示す系統<YS−1>の感受性の異なる系統の交配により雑種第一代(F1)を作製した(図1)。このF1個体を供試魚として、S.iniae
による感染実験を行い(浸漬感染:菌数2.0×106/ml 平均魚体長10cm)、生死の表現型分離、及び死亡日までの経過日数による表現型データを得た。
2.ヒラメ高密度遺伝子連鎖地図(1380座位)から(図2)、全ゲノム領域をカバーできるようにマイクロサテライトマーカー476座位を選別し、解析家系F1においてDNA多型が検出可能か確認した。次に多型が確認できたマーカー158座位を用いて、前述の感染実験より得た死亡魚(n=44)及び生存魚(n=46)について、2ロットの感染試験区(合計180個体)のselective
genotypingによりマーカー座位での遺伝型データを収集した。
3.解析に用いた表現型データは生か死の2値要素として、Kruskal-Wallisによるノンパラメトリック連鎖解析を行なった。4.F1家系における連鎖解析で、連鎖群JF−10でP<0.01の領域と、連鎖群JF−7、JF−11,JF−17でP<0.005の領域を見つけることができた(図3)(表1)。
[成果の活用面・留意点] これらの候補領域を指標に、連鎖不平衡を利用したマーカー選抜育種を計画している。まずはパイロット試験として、解析家系のF1兄弟個体よりマーカー遺伝型に基づく親魚選抜を行い、F2後代における連鎖球菌症に対する抵抗性の感染実験を行なう。マーカー選抜の有意性が確認できたら、実際の生産種苗にも交配して実用性の検討を行なうことを予定している。
[その他] 研究課題名:高効率連鎖解析技術の開発と耐病性QTLマーカーの同定
研究期間:H18−22,
予算区分:交付金プロジェクト
研究担当者:尾崎照遵、岡本裕之、岡内正典、荒木和男、山田敏之、松山知正、坂井貴光
発表論文等:2009
10th International Symposium on Genetics in Aquaculture (ISGA), Bangkok,
Thailand, |
[具体的データ] |
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