国内で分離されたEdwardsiella ictaluri のAFLP法によるDNA多型解析
 2007年よりアユで発生しているエドワジエラ・イクタルリ感染症について各地で分離された原因菌E. ictaluri の疫学的関連性を明らかにするためAFLP法によるDNA多型解析を行った。国内各地で分離されたE. ictaluri は遺伝的に同じ系統であり、本症の伝播は米国や東南アジアでの発生のケースよりも比較的短期間に起こったのではないかと推察された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 魚病診断・研修センター 魚病診断研究グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖部会 専門 病理 研究対象 あゆ 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
近年、河川のアユにおける冷水病の被害が大きいが、2007年3都県の河川のアユにおいて冷水病の症状を示さないエドワジエラ・イクタルリ感染症が発生し、国内で初めて原因菌E. ictaluri が分離された。2008年に病魚及び外観健常魚より細菌分離を行ったところ他県の河川のアユやギギからも本菌が分離された。本研究では、各地で分離されているE. ictaluri の疫学的関連性を明らかにするため AFLP 法によるDNAフィンガープリント解析を行った。
[成果の内容・特徴]
2007年に3都県の河川のアユから分離された3株、2008年に7県の河川のアユから分離された7株及びギギから分離された1株をAFLP解析に供した。また、比較対照として1970年代に米国でナマズより分離されたATCC 5株、2002年と2003年に東南アジアで養殖Pangasius hypophthalmus から分離された4株、日本でウナギより分離されたE. tarda を用いた。AFLP解析におけるDNAの断片化には、EcoRIとMseIの2種類の制限酵素を用いた。DNA断片は、末端に付加されるアダプターに相補的な配列を含む10 種類の蛍光標識プライマーセットを用いたPCRにより標識され、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離された。電気泳動のバンドパターンに基づく系統解析はUPGMA法により行った。

いずれのプライマーセットにおいてもE. ictaluri の電気泳動像はE. tarda と大きく異なり、E. ictaluri 菌株間において多数の共有バンドがみられた。米国由来株間及び東南アジア由来株間には多型性を示すDNA断片が認められたが、国内由来株間の泳動パターンは全てのプライマーセットにおいて同一であり(図1)、系統解析において一つのクラスターに含まれた(図2)。このことから、国内で分離されたE. ictaluriは遺伝的に同じ系統であると考えられた(図2)。2007年から2008年の国内における本症の伝播は米国や東南アジアでの発生のケースよりも比較的短期間に起こったのではないかと思われる。
[成果の活用面・留意点]
本研究により同じ系統のE. ictaluri が国内各地に伝播していった可能性が高いことが明らかとなり、今後感染ルートの解明が感染拡大防止にとって重要になると共に、未感染地域への本菌の浸潤に対する監視も行ってゆく必要がある。
[その他]
研究課題名:新興性または再興性等重要疾病の迅速・早期診断法の開発

研究期間:平成18-22

予算区分:交付金(一般研究)

研究担当者:坂井貴光、湯浅 啓

発表論文等:Lett.Appl.Microbiol., (2009) 49(4), 443-449.
[具体的データ]

図1.ポリアクリルアミドゲル電気泳動におけるバンドパターン

1〜5,米国由来株;6〜9,東南アジア由来株,10〜20,国内分離株;21,<i>E. tarda</i>;M,分子量サイズマーカー

図2.バンドパターンに基づく系統樹





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