マハタの安定養殖生産のためのVNNワクチンの開発 |
マハタは、新規養殖種として期待されているが、養殖過程に頻発するウイルス性神経壊死症(VNN)が生産の障害となっている。本研究は、
VNNを予防するワクチンの実用化に必要な基礎的知見の収集を目的とし、ワクチン投与法、製造法を開発し、試作ワクチンが養殖漁場での自然感染に対し有効であることを確認した。これによりマハタの安定生産に必要なVNNワクチンの製品化に目処がついた。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 病害防除部 種苗期疾病研究グループ |
連絡先 |
Tel.0972-32-2125 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
魚類 |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] マハタは、市場競争力のある新規重要養殖種として量産化が進められているが、養殖過程に頻発するウイルス性神経壊死症(VNN)が、本種の安定生産の最大の障害となっている。本研究は、
VNNを予防するワクチンの実用化に必要な基礎的知見を収集することを目的とし、ワクチン投与法、製造法を開発すると共に、養殖漁場での自然感染に対する試作ワクチンの有効性を確認した。
[成果の内容・特徴] 1. マハタの養殖場でVNNを引き起こすベータノダウイルスを収集し、ウイルスが遺伝子型および血清型を分析し、ワクチン製造株に必要な性状を明らかにした(図1)。
2. 開発した不活化ワクチンは、腹腔内への注射法で、投与量は107.3TCID50以上(不活化前の感染価)、投与回数は1回、魚体のサイズは約10g以上で投与する必要があることを明らかにした(図2)。
3. 不活化ワクチンを製造する際の最適なウイルスの培養条件を明らかにした。これにより、高濃度の培養ウイルスを安定的にワクチンの製造に供給することが出来るようになった。
4. 試作したワクチンを用い養殖漁場で野外試験を実施したところ、実施した全漁場においてワクチン投与群の累積死亡率は、無投与群に比べ有意に低く、試作ワクチンの有効性と安全性が実証された(図3)。
[成果の活用面・留意点] 1. 野外試験おいて本ワクチンの有効性と安全性が確認された。これらの成績は、製薬メーカーによる製造販売の承認申請に必要な資料として利用でき、ワクチンの製品化に目処がついた。
2. 本成果によりマハタ養殖業の早期の安定化、ひいては養殖産業全体の活性化が図られるものと期待される。また、本病は我が国のみならず東南アジアやヨーロッパなどの多くの国々において、数多くの魚種(30種以上)で多発していることから、本ワクチンの実用化は本病の被害に苦しむ全世界の養殖産業にとっても大きな福音になると考えられる。
[その他] 研究課題名:高級魚アラの安定養殖生産のためのVNNワクチンの開発
研究期間:平成18-20年度
予算区分:農林水産技術会議 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
研究担当者:森 広一郎・西岡豊弘・菅谷琢磨・佐藤純(水産総合研究センター)・羽生和弘・田中真二(三重県)・山下浩史・八木秀志・中岡典義・松岡学(愛媛県)・中井敏博・冲中泰(広島大学)・黒田丹・堤信幸・長井伸也・加藤哲雄(日生研株式会社)
発表論文等:山下・森・黒田・中井
(2009): Journal of Fish Diseases,32(9), 767-775. |
[具体的データ] |
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