クルマエビのホワイトスポット病(WSD:white spot disease) 経口ワクチンの開発の取り組み
クルマエビにおいてホワイトスポット病原因ウイルスWSSV (white spot syndrome virus) フリー種苗の生産技術は開発されたが,養殖生産過程における効果的な水平感染対策がない。ここでは,WSSVの構造タンパク質であるrVP26およびrVP28のクルマエビへの経口投与によるWSD防御効果について明らかにした。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 病害防除部 種苗期疾病研究グループ 連絡先 Tel.0972-32-2125
推進会議名 水産増養殖部会 専門 病理 研究対象 くるまえび 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
クルマエビにおいてWSSV感染耐過エビが再感染に対し抵抗性を獲得することが明らかにされたことから、このような免疫様現象を利用したWSDの防除技術の開発が可能であると考えられる。これまでに組換え大腸菌で発現したWSSVのrVP26およびrVP28の筋肉注射によるWSD防御効果は明らかにされている。この研究では、より実用的な経口投与法による防御効果について検討し、免疫様現象を利用した防除技術(ワクチン)による養殖過程での積極的なWSD防除対策の構築を目指すことを目的とした。
[成果の内容・特徴]
粗精製したrVP26およびrVP28(図1)を10μg/g/日で配合飼料に混合し, 平均体重6.8gのクルマエビに15日間投与した。投与対照区には,大腸菌由来タンパク質を24.5μg/g/日で、非投与対照区にはPBS(リン酸緩衝液)を同様に投与し、経口投与終了10日後に経口,浸漬および注射で攻撃試験を実施した。さらに、rVP26経口投与し、経口、浸漬および筋肉注射により攻撃した区の有効率(RPS)は各々100%、71%および61%、一方、rVP28投与区では、100%、70%および34%となった。経口投与群のRPS値は、rVP28投与区の筋肉注射攻撃(34%)を除けば、全て60%以上であった。一方、大腸菌タンパク質投与区のRPSは、経口攻撃区で54%であったが、浸漬および筋肉注射攻撃では各々22%および0%と、累積死亡率でもrVP26およびrVP28投与群に比べ有意に低いことが確認され、rVP26とrVP28投与によるWSD防御効果が確認された(図2.表1、2)。
[成果の活用面・留意点]
WSDは,国内のクルマエビ類の増養殖のみならず世界的にも被害をもたらしており,効果的な防除対策が望まれている。現在のクルマエビ種苗生産過程における防除対策は,薬剤による治療効果が期待できないことから,ウイルスフリーの親エビ選別や卵消毒などが中心であるが,より積極的な予防対策が必要不可欠であり,その一つとして免疫様現象を利用した防除技術の開発が期待される。本研究において、実用性に優れていると考えられる組換え大腸菌で発現したWSSV構造タンパク質の経口投与による防御効果を明らかにしたが,さらに防御効果の発現時期および持続期間を明らかにすることで,より実用的な防除技術の構築につながると考える。
[その他]
研究課題名:クルマエビの免疫様現象を利用したWSDの防除技術の開発

研究期間:平成19年度〜平成20年度

予算区分:所内プロ研

研究担当者:佐藤純・森広一郎・池田和夫(水産総合研究センター)、西澤豊彦、吉水守(北海道大学大学院)

発表論文等:佐藤純・森広一郎・西澤豊彦・吉水守(2006)特許出願(特開第2008-063302号)、J. Satoh, T. Nishizawa, M. Yoshimizu (印刷中) Dis.Aquat.Org.
[具体的データ]




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