アワビの大量死を引き起こすフランシセラ症診断法の確立 |
メガイアワビ種苗生産場で発生した大量死の原因となるフランシセラ属細菌の分離・培養に成功した。さらに特異的なPCRプライマーと菌体に対するウサギ抗血清を作成し、本疾病の診断方法を確立した。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 病害防除部 病原体制御研究グループ |
連絡先 |
Tel.0599-66-1830 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
あわび |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] メガイアワビ種苗生産場で感染症が原因と思われる大量死が発生したが、病原体は不明であった。そこで、本疾病について病理組織学的特徴を明らかにすること、分子の情報から病原体の分類学的位置を推定すること、病原体を分離・培養すること、さらに診断法を開発することを目的とした。
[成果の内容・特徴] 1 本疾病の病理学的特徴と病原体の組織内の分布を明らかにした(図1)。
2 分子系統学的解析から、本疾病の病原体はフランシセラ属細菌と推定された。
3 本疾病の原因細菌の分離・培養が可能となった
(図2)。
4 分離菌を用いた感染実験により本疾病が再現された。
5 不明病と診断され保存されていたエゾアワビの組織ブロックと、本病原体特異プローブを用いた
in situ ハイブリダイゼーションから、過去に本疾病がエゾアワビでも発生していたことが判明した
(図3)。
6 本病原体検出のため、本菌に特異的なPCRプライマーと菌体に対するウサギ抗血清を作製し、それらの有用性を確認した
(図4)。
[成果の活用面・留意点] PCRによる病原体の検出および、菌体に対する抗体を作成して,各地の公的種苗生産施設に提供することで,本疾病の診断・防除を容易にしアワビ種苗生産の安定化に貢献することが期待される。
[その他] 研究課題名:新興感染症の病原体の特性と発病機構の解明
研究期間:平成18-22年
予算区分:交付金(一般研究)
研究担当者:三輪 理・釜石 隆・松山知正・大迫典久(養殖研)、後藤悦郎(島根県)
発表論文等:
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[具体的データ] |
図1
自然発症貝の組織像
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a
メガイアワビのエラの一部が水腫状になっており,細胞が浸潤している部分が観察される。b
エラの拡大像。浸潤した細胞の中に球菌様の構造物 (1-2μm程度)
が多数認められた。多くは食細胞と思われる遊走細胞に取り込まれて存在した。
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図2
フランシセラ属細菌の分離
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凍結保存していた病貝血リンパ液から、ユーゴン・1%ヘモグロビン・70%海水寒天培地 (15℃)
で新種と思われるフランシセラ属細菌が分離された。 |
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図3
エゾアワビからの検出
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a
保存されていた組織ブロックと、本菌特異プローブによる in situ
ハイブリダイゼーションを行ったところ陽性反応が出た。よってエゾアワビが過去にフランシセラ属細菌に感染したことが明らかとなった。bは陰性対照プローブによる像。
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図4
菌体の検出
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a
メガイアワビ病貝から特異プライマーによって検出されたフランシセラ属細菌の16S rRNA遺伝子の部分領域 (423
bp)。b 腹足の塗抹標本からウサギ抗血清によって検出されたフランシセラ属細菌。
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