アユの冷水病を予防する実用的なワクチンの開発 |
アユ冷水病菌に対する実用的なワクチンを開発するため、ワクチン製造用株を決定するとともに、ワクチンの製造技術及び投与技術を確立した。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城分室 病害防除部 健康管理研究グループ |
連絡先 |
Tel.0596-58-6411 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
あゆ |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] アユの冷水病は、内水面漁業で最も深刻な問題の一つである。冷水病克服のために、本研究では、冷水病ワクチンの製造方法を開発すると共に、ワクチンの有効性、魚に対する安全性等を解明し、その結果に基づき実用的なワクチンの作製方法と使用方法を提案することを目的とした。
[成果の内容・特徴] 1.神奈川県、滋賀県、広島県、シェリングプラウ・アニマルヘルスとの共同で研究を進めた。
2.各種冷水病菌の性状を比較して、ワクチン製造用株を強毒株PH−0424に決定した(図1)。
3.新培地(1/2CGY)を使用した、凍結乾燥浸漬ワクチン(FDワクチン)の製造方法を決定した。
4.人工アユ種苗にも湖産アユ種苗にも使用できる投与方法(浸漬法)を決定した(図2)。
5.FDワクチンは、投与時水温が15〜25℃の範囲で有効であり、少なくとも製造後1年間はその有効性が維持された(図3)。
[成果の活用面・留意点] 1.本成果を受けて、製造・販売承認申請に向けた冷水病ワクチンの研究は、共同研究機関である製薬メーカーが主導する試験に移行した。
2.研究過程で開発された冷水病菌の遺伝子型の判別法(図4)は、「アユ冷水病防疫に関する指針(平成20年3月改訂版)」に反映された。
[その他] 研究課題名:アユ冷水病の実用的ワクチン開発
研究期間:平成17−19年度
予算区分:農林水産技術会議 農林水産研究高度化事業
研究担当者:乙竹充・中易千早・松山知正・吉浦康寿(水産総合研究センター)、原日出夫・相川英明(神奈川県)、佐野聡哉・菅原和宏(滋賀県)、永井崇裕・飯田悦左(広島県)、井上喜久治(シェリング・プラウアニマルヘルス)
発表論文等:吉浦・釜石・中易・乙竹(2006)魚病研究41(2),
67-71、原(2007)防菌防黴35,
57-63、乙竹・原・佐野・永井(2008)獣医畜産新報61(10), 833-834。 |
[具体的データ] |
<b>図1 各種の冷水病菌株で作製したワクチンの有効性</b>
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各種冷水病菌株でワクチンを作製し、有効性を比較した。その結果、アユ由来の強毒株PH-0424株で作製したワクチンが最も有効性が高かった。そこで、本菌株をワクチン製造用株と決定した。
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<b>図2 凍結乾燥ワクチンとその投与</b>
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ワクチンは保管や運搬に便利なように、濃縮されており(写真左)、使用直前に飼育水に溶かす。約2 gの濃縮ワクチンから750
mLのワクチン液(写真右)が作製出来る。ワクチン液にアユを5分間浸けて免疫する。
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<b>図3 凍結乾燥ワクチンの最小有効抗原量の検討</b>
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ワクチン投与後に冷水病に人為感染させ、各試験群の死亡率を対照群(無処理区)と比較した。無希釈原液ワクチン群または2倍希釈ワクチン群では、対照群より有意に(危険率5
%)多くの魚が生残した。そこで、ワクチンの希釈率を2倍に決定した。
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<b>図4 冷水病菌の遺伝子型のタイピング</b>
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タイピングに用いた遺伝子断片の模式図(a)と電気泳動像(b)。遺伝子型Aは、<i>Hin</I>f
I消化部位が2つ存在し、3つの断片になる。遺伝子型Bは、同部位が1つ存在し、2つの断片になる。
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