高脂質低タンパク質飼料がマダイ稚魚の成長および肝膵臓の酵素活性に及ぼす影響
粗脂肪(CF)15%,粗タンパク質(CP)52%の飼料を対照に,魚油でCFを20および24%に増大してCPを43および37%に削減した飼料,ならびに同飼料に添加した魚油の45%をパーム油で代替した飼料を作製し,マダイに給与した。その結果,マダイ稚魚は高脂質低タンパク質飼料を効率的に利用できないこと,パーム油は魚油よりも肝膵臓における脂肪酸合成,アミノ基転位および糖新生を抑制することが示された。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城分室 生産システム部 飼餌料研究グループ 連絡先 Tel.0596-58-6411
推進会議名 水産増養殖部会 専門 魚類栄養 研究対象 たい 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
養殖現場水域における窒素およびリンによる環境負荷が大きな問題になっており,海域によってはその大部分が飼料由来のものである。両者を効果的に削減する方法の一つとして,飼料中の魚粉を脂質で代替することがあげられる。本研究はマダイにおける魚粉代替源としての魚油およびパーム油の利用性について検討した。
[成果の内容・特徴]
マダイの増重率,日間成長率および飼料効率は対照区で最も優れており,飼料脂質含量の増大に伴い低下したことから,マダイ稚魚は高脂質低タンパク質飼料を効率的に利用できないことが示された。また,飼料中脂肪酸組成が代謝酵素活性に及ぼす影響を調べた知見はこれまでみられなかったが,当該研究において肝膵臓の脂肪酸合成,アミノ基転移および糖新生の酵素活性は,飼料中の脂質含量だけでなく,むしろ脂肪酸組成に顕著な影響を受けることが初めて示された。
[成果の活用面・留意点]
本研究の結果は,高脂質飼料を作製する場合,飼料脂質含量だけでなく脂肪酸組成にも留意する必要があることを示したものである。
[その他]
研究課題名:持続的養殖に資する養魚用飼料の開発に関する研究

研究期間:H17~H19

予算区分:運営交付金

研究担当者:杉田 毅,山本剛史,古板博文

発表論文等:Sugita, T., T. Yamamoto and H. Furuita (2007) Effect of partial replacement of dietary protein by fish oil on growth and hepatopancreatic enzyme activities in fingerling red sea bream Pagrus major. Aquaculture Sci. 55, 431-440.
[具体的データ]

飼料組成



飼料の脂肪酸組成

パーム油添加飼料(MPDとHPD)は,EPA(20:5n-3)およびDHA(22:6n-3)の含量が低いが,パルミチン酸(16:0),オレイン酸(18:1n-9)およびリノール酸(18:2n-6)の含量が高い。


飼育成績

増重率,日間摂餌率および飼料効率は対照区において高く,油種に関係なく高脂質飼料区において著しく低い。


肝膵臓の代謝酵素活性

脂肪酸合成(ICDH,G6PDHと6PGDH)およびアミノ基転移(GOTとGPT)の酵素活性は,飼料脂質の増大に伴い減少し,特にパーム油添加区でより顕著であった。また,糖新生酵素(G6PaseとFBPase)活性はパーム油添加区で減少した。





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