コイ春ウイルス血症原因ウイルス(SVCV)の各種消毒剤による不活化 |
コイ春ウイルス血症原因ウイルス(SVCV)に対する5種類の薬剤の殺ウイルス効果についてEPC株化細胞を用いて評価した。SVCVが99.99%以上不活化された濃度は以下の通りである:塩化ベンザルコニウム100ppm(20分)、アルキルトルエン500ppm(30秒)または350ppm(20分)、グルコン酸クロルヘキシジン175ppm(30秒)または100ppm(20分)、クレゾール0.25%(30秒)または200ppm(20分)、エタノール50%(30秒)または40%(20分) |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 魚病診断・研修センター 魚病診断研究グループ |
連絡先 |
Tel.0599-66-1830 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
こい |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] コイ春ウイルス血症(SVC, spring viremia of carp)はOIE(the
International Aquatic Animal Health Code of the Office International des
Epizooties)において通達報告義務のある病気として登録されている。本症は1971年に定義、命名されて以来、ヨーロッパの国々で報告されてきた。しかし、最近になって、ロシアや米国からの本症の発症が報告された。日本においても、本症は持続的養殖生産確保法で特定疾病として指定されており、コイの世界的な商業取引にともない、本症の侵入が警戒されている。本症原因ウイルス(SVCV)の進入や拡散を防ぐ意味でも消毒法の確立は重要である。本研究では、低毒性、低刺激性で手や器具の消毒に適した5種類の消毒剤、ならびに、UV照射を用いて、SVCVに対する殺菌効果を調べた。
[成果の内容・特徴] SVCV(S30株)を各種消毒液(表1)およびUVで処理した後、EPC魚類株化細胞に接種して、TCID50/mLで殺ウイルス効果を判定した。消毒液の効果を表2に示した。SVCVが99.99%以上不活化された消毒薬の濃度と反応時間は以下の通りである:塩化ベンザルコニウム100ppm(20分)、アルキルトルエン500ppm(30秒)または350ppm(20分)、グルコン酸クロルヘキシジン175ppm(30秒)または100ppm(20分)、クレゾール0.25%(30秒)または200ppm(20分)、もしくはエタノール50%(30秒)または40%(20分)。UV照射試験では、99.9%のウイルス不活化効果(3-log
reduction)はUV照射量5 x 103μWs/cm2であり、7-log reduction以上のウイルス不活化効果はUV照射量3 x 104
uWs/cm2で認められた。
[成果の活用面・留意点] 本研究の成果ならびに既知の情報から、養殖現場におけるSVCVに対する消毒方法として表3にまとめた。99.99%以上の殺ウイルス効果が期待できる消毒方法を現場で採用することが望ましいと考えられた。しかし、塩素の使用に関しては、540ppmが推奨されているが高すぎて実路的でない。そこで、塩素消毒に関しては、殺ウイルス効果は若干落ちるものの、7.6ppm以上で20分間以上が現実的な使用方法として考案した。
[その他] 研究課題名:病原体の消毒の調査
研究期間:平成18年
予算区分:消費・安全局「魚類防疫技術対策委託事業」
研究担当者:桐生郁也・栗田潤
発表論文等:Fish
Pathology, 42, 111-113 (2007) |
[具体的データ] |
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