コイ仔魚はコイヘルペスウイルス(KHV)に感受性がない |
コイ稚魚は成魚と同様にKHV感染により死亡するが、仔魚は死亡しないことが示された。コイ仔魚が死亡しない理由として、仔魚は感染後、治癒したのではなく、感染を受けていなかったと考えられた。 |
担当者名 |
独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城庁舎 病害防除部 病原体制御研究グループ |
連絡先 |
Tel.0596-58-6411 |
推進会議名 |
水産増養殖部会 |
専門 |
病理 |
研究対象 |
こい |
分類 |
研究 |
「研究戦略」別表該当項目 |
1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発 |
[背景・ねらい] コイは幼魚、若魚及び成魚期のいずれもKHVに対し感受性があり、サイズが小さいほど死亡率が高いことが知られているが、仔稚魚期の感受性については不明であった。そこで、コイ仔稚魚のKHVに対する感受性について調べた。
[成果の内容・特徴] 由来の異なるコイ2群を用い、それぞれの仔稚魚期に感染試験を行った。その結果、仔魚期(日齢3日及び4日、平均全長7.5及び8.7mm)ではKHV病による死亡はなかったが、稚魚期(日齢13日及び18日、平均全長13.8及び29.2mm)になると69%および100%死亡し、1尾を除いたすべての死亡魚からKHVが検出された。そこで、仔魚期のコイがKHV病により死亡しない原因を推察するため、ふ化1日後のニシキゴイの仔魚をKHVに暴露し、その1ヶ月後にKHVの再攻撃試験を実施した。前回と同様、仔魚期にKHVに暴露されたニシキゴイはKHV病による死亡が生じなかったが、稚魚期における再感染試験によりすべての個体がKHV病により死亡した。このことから、仔魚期にKHVに暴露されたコイ仔魚は感染後、治癒したのではなく、感染を受けていなかったと考えられた。これらの実験結果から、コイ仔魚はKHVに対する感受性を持たず、成長にともなってKHVに対する感受性が生じると推察された。
[成果の活用面・留意点] ・KHV病は、養殖場のみならず天然水域での被害も大きく、KHVが垂直感染すると、資源回復の遅れが懸念される。一方、KHVは自然環境水中では数日で不活化されることが知られており(Shimizu
et al.,
2006)、自然水域ではコイは受精後ふ化までに1週間程度要する事と、コイ仔魚がKHVに対し感受性を示さない今回の結果とを考え合わせると、もし感染耐過した親魚がウイルスを排出したとしても、仔魚が感染を受ける危険性が低いことが推察される。
・コイ仔魚期にはKHVに対するレセプターが無いと推察されたことから、本結果は今後KHVと宿主との研究に活用出来る。
[その他] 研究課題名:他魚種のKHVに対する感受性及び垂直感染の可能性の検討
研究期間:平成16年〜平成18年
予算区分:先端技術を活用した農林水産研究高度化事業
研究担当者:伊東尚史・西岡豊弘
発表論文等:Fish
Pathology, 42, 107-109 (2007) |
[具体的データ] |
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