魚類脂肪細胞の培養系の確立と細胞分化機構の解析
海産魚マダイにおいて前駆脂肪細胞の無血清培養系を確立し、魚類脂肪細胞分化への内分泌や微量栄養素の影響を調べた。マダイ脂肪細胞は培養条件下においても脂肪蓄積や代謝遺伝子発現能を保持しており、インスリンやT3などが魚類脂肪細胞分化を促進することを明らかにした。これらの知見は養殖魚の体脂肪蓄積機構の解明や体成分制御に寄与するものである。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産システム部 飼餌料研究グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖部会 専門 魚類栄養 研究対象 たい 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 2(2)栄養生理及び生体機能の解明
[背景・ねらい]
魚類における脂肪組織は主要なエネルギー蓄積部位であるとともに養殖生産物の品質を決定する一因である。この研究では養殖魚における脂肪組織発達機構を明らかにすることを目的とした。
[成果の内容・特徴]
脂肪組織・脂肪細胞の発達は生体内においては個体の生理状態や内分泌の影響を受けるため、細胞の特性を把握することは困難である。この研究においては、それらの影響を除外するため、生体から分離した無血清初代細胞培養系を用いてマダイ脂肪細胞分化機構を解析した。マダイ脂肪細胞分化にはインスリンやT3が促進効果を示したが、哺乳類脂肪細胞の場合と異なり、脂溶性ビタミンには効果は見られなかった。脂肪細胞の分化機構に魚類と哺乳類で若干の差異があることが示唆される。
[成果の活用面・留意点]
本研究における成果は、養殖魚における体脂肪蓄積制御に関する基礎的知見として活用が期待される。
[その他]
研究課題名:魚類における脂肪組織の分化・形成機構の解明



研究期間:H18-19

予算区分:交付金プロ・バイオデザイン

研究担当者:奥 宏海、奥村 卓二

発表論文等:Oku et al. Effects of insulin, triiodothyronine and fat soluble vitamins on adipocyte differentiation and LPL gene expression in the stromal-vascular cells of red sea bream, Pagrus major. Comp. Biochem. Physiol.B144, 326-333, 2006.
[具体的データ]

培養条件下での脂肪細胞分化

マダイ脂肪細胞は培養条件下においても、脂肪代謝・蓄積能を保持しており、分化に伴い細胞内に脂肪滴の蓄積が認められる。


脂肪蓄積に及ぼすインスリンの影響

インスリン添加により細胞内の脂肪蓄積が促進される。


LPL遺伝子発現へのホルモン等の影響

分化指標であるリポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子へのホルモン添加の影響。インスリンにより脂肪細胞分化が促進されることを示す。


インスリンと各種ホルモン等の共存効果

インスリン存在下においてT3が脂肪細胞分化の促進効果を示した。





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