野生型及び飼育型コイのコイヘルペスウイルスに対する感受性の比較
 琵琶湖産野生型コイは飼育型コイに比べコイヘルペスウイルスに対する感受性が高いことが示唆された。2004年の琵琶湖におけるコイヘルペスウイルス病による大量死の原因の一端を明らかにした。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城分室 病害防除部 病原体制御研究グループ 連絡先 Tel.0596-58-6411
推進会議名 水産増養殖部会 専門 病理 研究対象 こい 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 2(2)病原体の制御及び宿主機能活用による病害予防技術の開発
[背景・ねらい]
 日本には外観的特徴やミトコンドリアDNAの塩基配列から区別出来る野生型と飼育型のコイが存在する。(注:野生型コイ及び飼育型コイとは、天然に生息しているか飼育されているかではなく、主に体型で区別される2つのコイの系群を意味する。野生型は一般に飼育型に比べ体高が低く魚雷型であり、用心深く、成長率が低い。琵琶湖・淀川水系、高知県四万十川等で生息が確認されている。一方、飼育型は体高が高く、人に慣れやすく、成長率が高い。移植や放流事業により全国に分布している。地方や人によっては野生型をマゴイ、飼育型をヤマトゴイ呼ぶ場合もあるが、マゴイはニシキゴイ(色ゴイ)と区別するため黒ゴイ全般を指す場合もある。)

 2004年琵琶湖においてコイヘルペスウイルス(KHV) 病によるコイの大量死が発生した際、回収された死亡魚の多くは野生型コイであったと報告されている。そこで、琵琶湖産野生型コイのKHVに対する感受性を飼育型コイと比較した。
[成果の内容・特徴]
 野生型コイを1試験区及び飼育型コイを3試験区用いて感染実験を行った。その結果、野生型コイ試験区、飼育型コイ1区、2区及び3区の死亡率はそれぞれ100%、95%、70%及び70%であった(図1)。また、野生型コイ区と飼育型コイ3区の各々の死亡ピーク時(野生型コイ区では感染8-9日後、飼育型コイ3区では感染18-19日後)におけるウイルスDNA量を3尾ずつ比較した結果、野生型コイのKHVゲノム量は飼育型コイ3区の値と比べ、尾鰭では10万倍から100万倍、脳では2.5倍から10倍多いことが示された(図2)。これらの結果から、琵琶湖産野生型コイは飼育型コイに比べKHVに対する感受性が高いことが示唆された。
[成果の活用面・留意点]
・野生型コイをKHV病発生水域に放流する際には注意する必要があると考えられる。

・KHVに対する高感受性を活かし、野生型コイをKHVの検疫検査等に利用することが可能である。

・飼育型コイの間でもKHVに対する感受性に差違が存在することから、耐病性育種の可能性も示唆される。


[その他]
研究課題名:他魚種のKHVに対する感受性及び垂直感染の可能性の検討

研究期間:平成16年〜平成18年

予算区分:先端技術を活用した農林水産研究高度化事業

研究担当者:伊東尚史・大迫典久

発表論文等:平成18年度日本水産学会大会講演要旨集、P81
[具体的データ]




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