遺伝マ−カ−を利用したエゾアワビとクロアワビの遺伝的識別
エゾアワビとクロアワビを識別するために、変異性の高い遺伝マ−カ−を開発した。これらのマ−カ−は両種で特徴的に組成が異なり、遺伝的距離から求めた類縁図は両種の地域集団を明確な2つのグル−プに分けた。これらの遺伝マ−カ−はエゾアワビとクロアワビの集団間の遺伝的違いをみるために有効であった。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産技術部 育種研究グル−プ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産養殖部会 専門 水産遺伝育種 研究対象 あわび 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)栽培資源の評価・管理手法の開発
[背景・ねらい]
エゾアワビとクロアワビは寒流域と暖流域で棲み分けされているが、形態学的分類が困難なため類縁関係は不明瞭であり、その識別は生態学だけでなく栽培漁業上の関心事である。近年、減少したアワビ漁獲量の回復のため、大量生産された人工種苗が放流されているが、エゾアワビの種苗生産は順調なものの、クロアワビでは筋萎縮症などが原因とされる大量斃死が頻発している。そのため、一部のクロアワビ生息域ではエゾアワビ種苗が放流されており、その影響が懸念されている。そこで、新しく開発した変異性の高いDNAマ−カ−を用いて、両生息域に分布するエゾアワビとクロアワビの地域集団を分析し、両種を遺伝的に識別するために有効な遺伝マ−カ−の確立を目指すものである。
[成果の内容・特徴]
1.アワビから集団解析が可能な8つのマイクロサテライトDNAマ−カ−を開発した。

2.エゾアワビとクロアワビ集団を明確に識別できる5つのマ−カ−をみつけた(図1)。

3.エゾアワビとクロアワビのそれぞれ5地域集団は、遺伝的距離を基に描いた類縁図からわかるように明確な2つのグル−プに分けられた(図2)。

4.これらの遺伝マ−カ−の利用により、アロザイム等の既存遺伝マ−カ−では難しかったクロアワビ生息域での放流エゾアワビ種苗の影響評価の実現が期待できる。
[成果の活用面・留意点]
 現場における実用的調査に向け、クロアワビ生息域でエゾアワビ人工種苗が継続的に放流されている漁場での検証が必要である。また、開発した遺伝マ−カ−がエゾアワビとクロアワビの集団レベルでの識別が可能になったので、次の段階として、さらなる遺伝マ−カ−の開発により個体レベルでの識別法の開発が必要である。
[その他]
研究課題名:遺伝マ−カ−を利用したエゾアワビとクロアワビの遺伝的識別

研究期間:平成13〜15年度

予算区分:交付金プロ研「「生態系保全型増殖システム確立のための種苗生産・放流技術の開発」

研究担当者:原 素

発表論文等:Hara, M. and Sekino, M. (2005) Genetic difference between Ezo-awabi Haliotis discus hannai and Kuro-awabi H. discus discus populations: microsatellite-based population analysis in Japanese abalone. Fish. Sci. 71, 754-766.
[具体的データ]










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