諫早湾アサリ養殖場におけるアサリ大量へい死原因の究明
諫早湾のアサリ養殖場では夏季に大〜小規模のへい死を生じている。その原因の1つである無酸素水がアサリ生息域に侵入するタイミングと期間を明らかにした。さらに、へい死の主たる原因を無酸素水の滞留時間と水温との関係等から説明し、へい死被害を防止・軽減するための対策に資する知見を得た。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産システム部  連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産養殖部会 専門 漁場環境 研究対象 あさり 分類 行政
「研究戦略」別表該当項目 2(1)初期発育機構の解明とその制御技術の開発
[背景・ねらい]
長崎県諫早湾沿岸ではアサリ養殖業が営まれ主要な収入源となっているが、夏季に発生する大規模なへい死による損失が経営・漁業振興の上で大きな妨げとなっている。このため,へい死要因を解明し早急に適切な対策を講ずる必要がある。
[成果の内容・特徴]
@2003-4年の夏季に多項目水質計を用いてアサリ養殖場の水質環境を連続的に記録した(図1)。アサリの大量へい死が起きた2004年には、水温は28〜33℃と非常に高かった。溶存酸素はシャトネラ赤潮により大きく変動し、小潮時以降無酸素が断続的に現れたが(図2)、無酸素水は養殖場周囲から流入していた。

A無酸素が観測されたのは小潮の翌日からであり、継続期間は約3日間であった(図2、2003年9月においても同様の結果)ことから、シャトネラ赤潮+小潮+高水温+静穏な天候の継続で無酸素発生の危険が高まると予測される。

Bアサリ体腔液中の有機酸はアサリの健康状態を示す良い指標であり、これを用いて環境条件およびへい死発生との関係を調べた(図1)。無酸素が観測されてから18時間後にはアサリ体腔液中のコハク酸濃度が15mol/ml、プロピオン酸濃度が2mol/mlを超え、急激なへい死が確認される前に極めて危険な状態になっていた(図3)。

C今回のへい死メカニズムとして、濃密なシャトネラ赤潮による大量の糞排泄(生理機能の低下)+平均31.4℃の高水温+無酸素曝露+無酸素に伴う硫化水素発生の組み合わせが考えられ、無酸素観測後わずか1日でアサリを全滅させたと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
○赤潮の監視および多項目水質計モニタリングにより貧酸素発生警報を発する必要がある。

○今後は無酸素水の流入による被害を防止するための施設・装置の開発および運用のための環境モニタリング・監視システムを構築する。
[その他]
研究課題名:アサリ資源回復のための干潟環境条件解明(水産基盤)

研究期間 :平成16年度(平成15年度〜平成17年度)

予算区分 :水産庁委託調査

研究担当者:日向野純也、徳田雅治

(水産工学研究所、長崎県総合水産試験場、学習院女子大学と共同研究)

発表論文等:2004年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会で発表
[具体的データ]




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