マイクロプレートを用いた簡便なウナギの卵質評価法
組織培養用マイクロプレートにウナギの受精卵を収容し,ふ化を経て摂餌開始期(ふ化8日後)に至るまで1尾ずつ個別に飼育することにより,死亡魚の除去や飼育水の交換を一切行わずに,受精率・ふ化率・初期生残率・形態異常率といった卵質評価の必須項目を極めて簡便に測定できるようになった。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産技術部 繁殖研究グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産養殖部会 専門 増養殖技術 研究対象 うなぎ 分類 普及
「研究戦略」別表該当項目 2(1)性成熟・産卵機構の解明とその制御技術の開発
[背景・ねらい]
人為催熟で得られるウナギ卵の卵質は不安定であり,種苗生産実用化のためには,卵質を的確に評価したうえでその改善を図ることが必須である。卵質は受精・ふ化のみならず仔魚の生残にも影響し,とくに摂餌開始までは必要な栄養を卵に依存するので,卵質の正確な評価のためには,この時期までの生残成績を把握することが不可欠である。しかし,これまではウナギ仔魚の生残率を簡便に測定する方法が確立されていなかったため,卵質評価の指標としては主として受精率とふ化率のみが用いられてきた。そこで,摂餌開始期までの生残成績を容易に測定できる方法を考案した。
[成果の内容・特徴]
・マダイ,ヒラメ等では通常,ビーカー等の容器に数十〜数百尾のふ化仔魚を収容し,毎日1,2回死亡魚を除去して数える方法が用いられている。しかし,この方法をウナギで試みたところ,ふ化から摂餌開始期までマダイやヒラメの2倍の8日間を要するために労力がかかるうえ,生残も安定しなかった。

・組織培養用48穴マイクロプレートの各穴に抗生物質とポリエチレングリコール(ふ化直後に仔魚が水面に張り付いて死亡する現象を防ぐ)を添加したろ過海水を満たし,受精卵を1個ずつ収容してふ化させると,死亡魚の除去や飼育水の交換をしなくとも,ふ化仔魚を摂餌開始期以降まで容易に飼育できることがわかった(図1)。

・媒精後の卵を無作為に採取し,上記の方法で飼育することで,受精率・ふ化率・生残率・形態異常率を簡便に同一サンプルで測定できるようになった(図2,3)
[成果の活用面・留意点]
・本方法は,ウナギの卵質評価の標準法として,種苗生産技術開発に取り組む各県の水産試験場等においても採用され,研究機関相互の卵質データの比較が容易になった。

・マイクロプレートを用いた個別飼育法は,換水や死亡魚除去の必要がなく結果も安定しているので,他の魚種の卵質評価にも応用できると考えられる。
[その他]
研究課題名:ウナギの卵質評価手法の確立と改善技術に関する研究

研究期間 :平成16年度(平成13〜15年度)

予算区分 :交付金プロ(栽培プロ研)

研究担当者:鵜沼辰哉,近藤茂則,田中秀樹,香川浩彦,野村和晴,太田博巳

発表論文等:Unuma et al. (2004)  Determination of the rates of fertilization, hatching and larval survival in the Japanese eel, Anguilla japonica, using tissue culture microplates.  Aquaculture 241, 345-356.
[具体的データ]




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