異種間雄性発生に関する研究
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城分室 生産技術部 名古屋博之・河村功一 連絡先 Tel.0596-58-6411
推進会議名 水産養殖 専門 増養殖技術 研究対象 淡水魚 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 7(2)優良品種の育成と遺伝資源の保存
[背景・ねらい]
ねらい・目的:1.環境破壊、乱獲等により魚類においても年々,絶滅危惧種が増加している。2.魚類精子の長期間保存技術は確立されている。3.魚類の雄性発生技術は種によって確立されているが,異種間での報告は少ない。4.希少種の精子と近縁の種の卵を用いた雄性発生を試み,希少種の保存・復活技術を開発する。

成果の特徴:1.タナゴ類全種に応用可能な精子の凍結保存技術を開発した。2.ミヤコタナゴ(国指定天然記念物・絶滅危惧IA類)とビワマス(準絶滅危惧)の精子,借り腹としてタイリクバラタナゴ,アマゴの卵をそれぞれ用いて雄性発生を行ない、その後、第1卵割阻止を施す事により、雄生発生2倍体を作出することに成功した。3.遺伝子マーカーにより,作出個体はいずれも雄親種の精子由来のゲノムだけから成る個体であることを確認した。4.劣性遺伝子のホモ化を避け異種間雄生発生魚の生存率を上げるため,精子融合法による雄性発生2倍体の作出を試みた。アルビノアマゴ精子を用いて実験を行った結果,アルビノアマゴの雄性発生2倍体を作出することに成功した。これらの個体はマイクロサテライトマーカーにより遺伝的にヘテロであることを確認した。
[成果の内容・特徴]

[成果の活用面・留意点]
成果の活用面等:1.希少種の保存・復活技術の開発に貢献できる。2.ジーンバンクにおける生体保存以外の保存方法の開発に貢献できる
[その他]
[具体的データ]

図1.第一卵割阻止型異種間雄性発生によるミヤコタナゴとRAPD法による証明

注)異種間雄生発生魚はミヤコタナゴ由来の遺伝子は持つものの、タイリクバラタナゴ由来の遺伝子は持たない事がわかる。
表1.精子融合法による異種間雄性発生2倍体の作出結果



図2.マイクロサテライトマーカーによる精子融合型異種間雄生発生魚のヘテロ性の証明(矢印)

注)→はサイズの異なる2つの対立遺伝子の存在を示す(緑と黒は対立遺伝子,赤はサイズマーカー)。このことから、精子融合型異種間雄生発生魚は第一卵割阻止型異種間雄生発生魚(遺伝的に完全なホモ)とは異なり、ゲノムのヘテロ性が高いことが判る。




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