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マダイイリドウイルス高感受性細胞の樹立
マダイイリドウイルスを効率的に培養できる魚類培養細胞(SKF-9)をイシガキダイ孵化仔魚から樹立した。SKF-9細胞は海産魚養殖で大きな問題となっているマダイイリドウイルス病の診断や試験研究用に有用な細胞として期待される。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構増養殖研究所 魚病診断・研修センター 魚病診断グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖関係 専門 病理 研究対象 ウイルス 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
マダイイリドウイルス病は国際獣疫事務局のリスト疾病に指定されており、日本ではマダイ、ブリ類、マグロといった海産魚の養殖において最も被害の大きいウイルス病である。マダイイリドウイルスの分離・培養には、イサキ鰭由来のGF細胞が既存の魚類培養細胞で最も効率がよいとされてきたが、他のウイルスと比べると遥かに細胞の感受性が悪く、本病の診断や試験研究において大きな障壁となってきた。そこで本研究では、マダイイリドウイルスに対する感受性が高いイシガキダイを用いて、マダイイリドウイルスを効率的に培養できる株化細胞の樹立を試みた。
[成果の内容・特徴]
孵化48時間以内のイシガキダイ仔魚から、17株の培養細胞を樹立した。それらにマダイイリドウイルスを接種したところ、SKF-9と命名した細胞株で細胞の球形・肥大化を特徴とする細胞変性が顕著に観察された(図1)。SKF-9細胞の至適増殖温度は25℃で、この温度では15日間は細胞が死滅することなく安定的に培養できることを明らかにした(図2)。電子顕微鏡観察により、マダイイリドウイルスを接種したSKF-9細胞では、培養上清中に大量のウイルス粒子が放出されていることが確認された(図3)。SKF-9細胞はこれまでマダイイリドウイルスの分離・培養に使われてきたGF細胞よりも100倍以上ウイルスの産生量が多いことも明らかになった(図4)。また、GF細胞ではウイルスを継代するにつれてウイルス産生量が低下していくが、SKF-9細胞ではウイルス産生量が低下することなく安定してウイルスを継代することが可能であった。
[成果の活用面・留意点]
SKF-9細胞はマダイイリドウイルスを効率的に培養できることから、本病の診断や試験研究用に有用な細胞であると考えられる。現在、国内外の試験研究機関からの問い合わせに応じて、SKF-9細胞の配布を実施している。
[その他]
研究課題名:交付金実施細目課題

研究期間:平成25年度から令和元年度

予算区分:交付金

研究担当者:河東康彦(魚病診断・研修センター)

発表論文等:Aquaculture, 473, 291-298 (2017)
[具体的データ]




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