[背景・ねらい]
ワクチンによる感染症の予防は水産養殖業において必須の手段となっている。多くのワクチンは、培養した病原体を薬剤等により失活させることで作成され
る。我が国で用いられている水産用ワクチンは、全て病原体を失活させた不活化ワクチンである。しかし、培養できない病原体では、このような手法によりワク
チンを作成することは出来ないため、組換えワクチンの開発を進めるのが一般的である。
病原体は複数のタンパクから構成されており、その全てがワクチンの標的となるわけではない。従って、組換ワクチンを開発するためには、感染防御に決定的に作用するタンパク(感染防御抗原)を特定する必要がある。
我々は、マダイイリドウイルスをモデルとして、迅速な感染防御抗原の特定手法の開発を試みた。
[成果の内容・特徴]
マダイイリドウイルスの全遺伝子の約7割に相当する72個の遺伝子について、小麦無細胞系を利用して組換えタンパクを作成し、それぞれに対するブリの血
清抗体の応答を網羅的に測定した(図1)。72種の組換えタンパクのうち、24種が本病の感染を耐過したブリの抗体に認識されていた(図2)。抗体に認識
される3種のタンパク、認識されない2種のタンパクについて、大腸菌を利用して組換ワクチンを作成し(図3)、ブリとカンパチに投与し、感染試験により防
御効果を測定したところ、抗体に認識される2つのタンパクで、防御効果が認められた(図4)。
本手法は、病原体のゲノムと感染を耐過した個体の血清さえあれば利用でき、分離培養ができない病原体に対しても応用可能である。
[成果の活用面・留意点]
組換えワクチンの標的抗原の迅速な特定
[その他]
研究課題名:免疫応答を利用したワクチン適用可能魚種の同定
研究期間:2013-2015
予算区分:農林水産・食品産業科学技術研究推進事業
研究担当者:松山知正,高野倫一,坂井貴光,中易千早
発
表論文等:Matsuyama, T., Sano, N., Takano, T., Sakai, T., Yasuike, M.,
Fujiwara, A., ... & Nakayasu, C. (2018). Antibody profiling using a
recombinant protein-based multiplex ELISA array accelerates recombinant
vaccine development: Case study on red sea bream iridovirus as a reverse
vaccinology model. Vaccine, 36(19), 2643-2649.
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