水産研究成果情報検索結果




Kudoa hexapunctataK. neothunniに特異的な遺伝子検査法の開発
クロマグロに寄生するKudoa hexapunctataと主にキハダマグロに寄生するK. neothunniはクドア 属の粘液胞子虫であり、これらは分子生物学的に非常に近縁である。分子疫学的調査を実施するために、それぞれに特異的な検査法の確立を試みた。各粘液胞子 虫のDNA配列を解析し、PCR法および定量PCR法を設計し特異性を検証したところ、それぞれを特異的に検出することに成功した。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構増養殖研究所 魚病診断・研修センター 魚病診断グループ 連絡先 Tel.0599-66-1879
推進会議名 水産増養殖関係 専門 病理 研究対象 寄生虫 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
Kudoa hexapunctataはメジマグロに寄生するクドア属の粘液胞子虫であり、食中毒への関与が懸念されている。K. neothunniは 主にキハダマグロに寄生し、食中毒への関与については不明であるが、ジェリーミートを引き起こすクドア属の一種である。これらは分子系統学的に非常に近縁 であり、既報の遺伝子検査法ではこれらを識別することはできない。今後これらの粘液胞子虫の分子疫学的調査を行う上ではそれぞれを特異的に検出可能な遺伝 子検査法の確立が必要である。
[成果の内容・特徴]
K. hexapunctataおよびK. neothunniの18S‐28SリボソームRNA(rRNA)遺伝子の塩基 配列を解読し、それぞれの種に特異的な遺伝子配列の検出を試みた。これらの種のrRNA遺伝子はゲノムDNA中に複数コピー存在しているが、全ての rRNAの遺伝子配列が100%一致しておらず、わずかに塩基配列が異なる当該遺伝子がそれぞれの種に存在している。K. hexapunctataおよびK. neothunniは 非常に近縁であるため、rRNAの遺伝子配列は非常に類似していたが、複数コピー存在しているrRNAの一部のユニットには種に特徴的な遺伝子配列が存在 していることを見出した。当該領域において、PCR法およびリアルタイムPCR(qPCR)法用のプライマーを設計し、各粘液胞子から抽出したDNAを用 いて遺伝子検出を試みた。その結果、PCR法およびqPCR法いずれもそれぞれの粘液胞子虫を特異的に検出することに成功した。また、標的となるrRNA 遺伝子を人工的に環状DNAに組込み、DNA濃度と遺伝子配列から遺伝子数を算出したスタンダードサンプルを作製し、遺伝子数が未知のサンプルを定量する ための検出系も構築した。
[成果の活用面・留意点]
クドア属粘液胞子虫の寄生自体が魚の生命に及ぼす影響は比較的に低いと考えられるが、食中毒やジェリーミートの原因物質となり得ることから、感染防除対策 や治療法の開発などが課題である。まずは、それぞれの粘液胞子虫の生活環や感染メカニズムの解明が必要であり、そのためにはそれぞれの種を特異的に検出で きることが重要である。K. hexapunctataおよびK. neothunniを特異的に検出できる本遺伝子検査法は、このような分子疫学調査において重要な技術となる。
[その他]
研究課題名:養殖業者や流通業者でもできる簡便な魚類寄生粘液胞子虫病の防除法の開発

研究期間:平成29-31年度

予算区分:イノベーション創出強化研究推進事業(生物系特定産業技術研究支援センター)

研究担当者:米加田 徹
[具体的データ]

PCR法の特異性の検証

K. hexapunctataおよびK. neothunniのDNAをそれぞれに特異的なPCRにより反応した結果、それぞれ目的の位置に明瞭なバンドが認められた。

qPCR法の特異性の検証

K. hexapunctataおよびK. neothunni検出用qPCRの特異性を検証したところ、それぞれの標的のみに遺伝子増幅反応が認められた。

qPCR法の定量性の確認

K. hexapunctataおよびK. neothunniのスタンダードDNAを用いて各qPCRにより反応を行ったところ、いずれも高い定量性を示した。




[研究成果情報一覧] [研究情報]