水産用ワクチンの新しい投与手法として有望なスタンプ法の開発


[要約]
β溶血性連鎖球菌症ワクチンの新しい投与方法として,注射法に匹敵する高い有効性
を持ち、かつ簡便な、経皮接種法(スタンプ法)の開発に成功した。
養殖研究所・病理部・免疫研0596-58-6411
[推進会議] 水産養殖 
[専門]    病理
[対象]    ニジマス
[分類]    研究

[背景・ねらい]
魚へのワクチンの投与方法として、現在主として注射法と浸漬法が使われている。浸漬法は同時に多量の魚を処理できるが、有効性が低い場合が多い。一方、注射法は有効性は高いが、手間がかかり、魚に与えるストレスも大きく稚魚には使用できない。そこで、注射法では有効であるが浸漬法では有効性が認められないβ溶血性連鎖球菌症ワクチンを用いて、簡便で稚魚にも投与可能な注射法に代わる新たなワクチン投与方法の開発研究を進めた。

[成果の内容・特徴]

従来の方法(注射法、浸漬法)および新たに考案した数種の方法を用いて、β溶血性連鎖球菌症不活化ワクチンをニジマス稚魚に投与した。4週間後に同菌株を用いて感染実験を行い、各種投与法の有効性を調べた。その結果、長時間浸漬法などは無処理および浸漬法と同様に効果が無かったが、ヒト用BCG接種針(図1)を用いたスタンプ法(図2)によって免疫された群は本症に対し有意に高い防御力を示した(図3)。さらに、10倍に希釈したワクチンを用いた場合でも、スタンプ法の有効性は原液を用いた注射法に匹敵する程高かった(図4)。
[成果の活用面・留意点]
本手法(スタンプ法)はβ溶血性連鎖球菌症に限らず、他の疾病のワクチンへも応用可能と考えられる。また、稚魚用のより小さな接種針を開発することにより、更に有用性は高まる。なお、本手法により付与された、β溶血性連鎖球菌症に対する免疫の持続期間を今後明らかにする必要がある。

[具体的データ]
図1.スタンプ法に用いたヒト用BCG接種針
図2.スタンプ法による投与例。魚はワクチン液に浸けられている。
図3.各種の方法で投与された、β溶血性連鎖球菌症ワクチンの有効性。
 スタンプ法および注射法でワクチンを投与された群は、β溶血性連鎖球菌症に感染させても、多くの魚が生き残った。
図4.10倍に希釈したワクチン液をスタンプ法で投与した場合の有効性。

[その他]
研究課題名:ワクチンによる養殖魚類のβ溶血性連鎖球菌症予防技術の開発
予算区分 :大型別枠「新需要創出」
研究期間 :平成11年度(10〜12)
研究担当者:免疫研究室・乙竹 充
特許出願中:中西・乙竹 (1999) 魚類への薬剤接種法、日本国、特願平11-269992号。

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