ウナギ仔魚育成に際しての投餌開始時期


[要約]
 人為催熟により得られたウナギ仔魚を育成するためには、摂餌開始時期や適正餌飼料を明らかにしなければならない。今回、免疫組織化学的手法を用いてウナギ仔魚の消化器官の発達過程を解析した結果、仔魚への投餌開始は孵化後1週間目頃と推定された。
水産庁養殖研究所・栄養代謝部・繁殖生理部
[連絡先] 05996-6-1830
[部会名] 
[専門]  
[対象]  
[分類]  

[背景・ねらい]
 ウナギ養殖業の安定化にとって、その種苗生産技術の開発が待望されている。現時点では、人為催熟によりウナギ仔魚を得ることには成功している。しかし、育成の過程で適正餌飼料の探索・開発など、諸々の難関を乗り越えなければならない。投餌開始時期の決定もそのひとつである。そこで、ウナギ仔魚の摂餌開始時期について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 仔魚期には胃が未発達なため、膵臓の消化酵素が消化の主体をなすと考えられる。そこで、膵臓の消化酵素の合成開始時期を明らかにするため、膵臓の蛋白質分解酵素の前駆体であるトリプシノーゲンをウナギの膵臓から精製し、それに対する特異抗体を作成し、仔魚の膵臓におけるトリプシノーゲンの出現時期を解析するための、免疫組織化学的手法を開発した。
  2. ウナギ仔魚の膵臓は、孵化後3日目に消化管から分化し、トリプシノーゲンの合成は、孵化後6日目に開始され、7日目にかけて活発化することが判明した(図1)。
  3. 孵化後6日目から7日目に、口の開口方向が腹側から前向きに変化し、組織学的知見からこの時期に眼が見えるようになることが判明し、摂餌が可能となると判断された。

[成果の活用面・留意点]

  1. これまで不明だった、ウナギ仔魚への投餌開始時期が孵化後1週間目であることが明らかになり、ウナギ仔魚育成技術開発の重要な手がかりとなる。
  2. 海産魚類の仔魚の餌料として一般的に用いられているワムシに代わる、ウナギ仔魚に適した餌飼料の探索・開発が必要である。

[その他]
研究課題名:内分泌学的手法を応用したウナギの催熟
予算区分 :大型別枠
研究期間 :平成7〜9年度
発表論文等:Development of digestive organs and feeding ability in larvae 
      of Japanese eel (Anguilla japonica). Can. J. Fish. Aqua. Sci. 
      1995(印刷中)

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