育種家系の飼育特性の評価のためのエドワジエラ症の浸漬感染試験条件の決定
育種家系の実用化に向けて、実証段階で作出した家系の飼育特性を評価しておく事が望ましい。本研究は、育種家系の飼育特性評価の一つとして、ヒラメ養殖に おいて最大の魚病被害をもたらしているエドワジエラ症に対する抵抗性の評価系を作出するために、原因菌の浸漬感染濃度条件を明らかにした。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構増養殖研究所 育種研究センター ゲノム育種グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖関係 専門 増養殖技術 研究対象 ひらめ 分類 普及
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
作出した育種家系を実用化するためには、成長や疾病抵抗性等の飼育特性を評価する必要がある。現在これまでに作出したレンサ球菌症抵抗性家系の実証試験を 行っているが、現場で活用されるためには、他の疾病に対する抵抗性についても評価しておくことが望ましい。本研究は、ヒラメ養殖において最大の被害をもた らしているエドワジエラ症に対する抵抗性を簡便に評価する試験系として、原因菌の浸漬による感染濃度条件を明らかにすることを目的とした。
[成果の内容・特徴]
エドワジエラ症の原因菌を用いて浸漬感染試験を実施する際の適当な菌濃度を決定した。試験魚には体長9センチのヒラメ市販種苗を用いた。各小型水槽(60x30x36cm、水量36L)に10尾ずつ入れて、4日間馴致した後、培養したエドワジエラの原因菌(Edwardsiella tarda、NUF806株)を様々な濃度1.3×10 7(cfu/mL)、1.3×106(cfu/mL)、1.3×105(cfu/mL)、1.3×10 4(cfu/mL)、 0(cfu/mL)となるよう飼育水に添加し、25℃で一時間、浸漬による感染を行った。その後19日間に渡り、感染死亡累積数を測定した。死亡魚は、組 織からの菌培養により、感染による死亡であることを確認した。試験期間をおよそ3週間と設定した場合、適切なエドワジエラの菌濃度は、1.3×10 6(cfu/mL)であることが明らかになった。
[成果の活用面・留意点]
開発した育種種苗の実用化の実証場面において、重大な疾病であるエドワジエラ症に対する抵抗性の評価指標の一つとなる試験条件が明らかになった。これによ り簡便に当該疾病に対する飼育特性評価ができるようになったが、試験結果の活用場面において注意すべき点として、他の疾病(例えばレンサ球菌症)に対する 選抜(育種)を行った家系は、必ずしも本疾病において抵抗性が認められることが期待できないことに留意する必要がある。場合によっては選抜対象形質以外の 抵抗性は低下する場合も論理的に考えられる。その際は、選抜を行った形質に関する遺伝子マーカー座を市販種苗に浸透させる育種手法を活用することによっ て、実用化の可能性を探索する必要がある。
[その他]
研究課題名:細菌性疾病抵抗性ヒラメの実用化実証研究

研究期間:平成28年度から平成29年度

予算区分:交付金プロ

研究担当者:松山知正、坂井貴光、高野倫一(増養殖研 魚病研究センター)、澤山英太郎(まる阿水産)、岡本裕之、尾崎照遵、嶋田幸典、石川卓、荒木和男(増養殖研 育種研究センター)

発表論文等:なし

[具体的データ]







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