クルマエビ養殖池における複合養殖アサリの餌料源の解明
大分県のクルマエビ養殖池でアサリ複合養殖試験を行った。複合養殖されたアサリの餌料源は、炭素・窒素安定同位体比等から植物プランクトンと推定され、エ ビ飼料やクルマエビの糞の餌としての寄与は少ないと考えられた。糞や残餌は分解されて栄養塩となり、効率的に植物プランクトンが増殖していることが示唆さ れた。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構増養殖研究所 養殖システム研究センター 増養殖環境グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖関係 専門 増養殖技術 研究対象 あさり 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
アサリの生産量は、過去30年間減少の一途をたどり、最盛期の16万トンが2016年には8500トンにまで落ち込み、依然として回復のきざしは見えな い。アサリ資源の減少要因の一つに、河川流量の減少や下水処理技術の高度化による餌不足が挙げられる。そこで瀬戸内海区水産研究所と(株)拓水は、 2012年にクルマエビ養殖場でのアサリ複合養殖試験を実施し、殻長10mmの稚貝が半年で殻長30mmにまで成長することを確認した。また2015年に は大分県農林水産研究指導センターが、殻長2mmのアサリ種苗をクルマエビ養殖池で半年養殖し、11トンものアサリを生産した。今後、クルマエビ養殖池で 産業規模での複合養殖を行うためには、アサリの餌の種類や量を把握することが必要不可欠である。本研究では、クルマエビ養殖池でのアサリの複合養殖試験に おいて、アサリの餌料源を推定した。
[成果の内容・特徴]
大分県のクルマエビ養殖池で実施したアサリ複合養殖試験において調査を行った。2015年11月に、アサリ、クルマエビ、クルマエビの糞、エビ飼料、懸濁態有機物(POM)、底生微細藻類の炭素・窒素安定同位体比(δ13 C、δ15 N) を分析した結果、複合養殖されたアサリの餌料源は、POMや底生微細藻類と推定され、エビ飼料やクルマエビの糞は、餌としての直接の寄与は少ないと考えら れた。また2016年6月から12月まで、毎月1回、アサリを複合養殖したクルマエビ養殖池の海水中のクロロフィルa濃度と栄養塩濃度を測定した。養殖池 のクロロフィル濃度は、外海水のクロロフィル濃度よりも数倍から100倍以上高く、POMに含まれる豊富な植物プランクトンがアサリの餌となっていること が示唆された。養殖池の栄養塩濃度は、外海水と比較するとDINはほぼ同程度だったが、PO 4 -PやSiO 2 -Siは養殖池の方が低かった。養殖池にはエビ飼料が投餌され、クルマエビからの排泄物や残餌の分解で、外海水よりも多くの栄養塩が添加されていると考えられるが、効率的に植物プランクトンが増殖して、より多くの栄養塩が利用されていることが示唆された。
[成果の活用面・留意点]
本研究は、クルマエビ養殖池での効率的な複合養殖技術の開発の基礎データとなる。より多くのデータを集積することにより、最適なアサリの複合養殖のマニュアル化に寄与する。
[その他]
研究課題名:クルマエビ養殖池における複合養殖アサリの餌料源の解明

研究期間:平成27〜28年度

予算区分:革新的技術緊急展開事業、交付金(シーズ研究)

研究担当者:石樋由香、渡部諭史、松本才絵(水産研究・教育機構増養殖研究所)、山田英俊(大分県農林水産研究指導センター)

発表論文等:クルマエビ養殖池で複合養殖したアサリの栄養源推定.平成28年度日本水産学会春季大会講演要旨集
[具体的データ]




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