藻類用ケイ酸成分供給剤の開発と藻類への新しいケイ酸成分供給方法
富士シリシア化学株式会社との共同研究により藻類用ケイ酸成分供給剤を開発し,介類幼生種苗生産過程への導入の可能性を検討した。その結果,珪藻類を中心に,餌料として有用な微細藻類の大量培養におけるケイ酸の持続的供給が可能となり,藻類培養の省力化,安定化経費削減,藻類の栄養価向上に寄与することができた。
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産技術部 育種研究グループ 連絡先 Tel.0599-66-1830
推進会議名 水産増養殖部会 専門 水産遺伝育種 研究対象 他の藻類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 7(2)優良品種の育成と遺伝資源の保存
[背景・ねらい]
介類の餌料として有用な珪藻類の培養にはケイ酸塩の添加が必須である。これまで,メタケイ酸ナトリウムや水ガラスを適宜添加する方式で行われてきたが,海水中で沈殿が生じたり,培養液が強アルカリ性に変質する欠点があった。今回開発したケイ酸成分供給剤は,中性のケイ酸粒であり,珪藻類の培養期間中,継続的にケイ酸成分を溶出させることが可能である。そのためケイ酸不足による増殖不良が回避された。また,pHも中性であるため藻類の増殖には適切である。
[成果の内容・特徴]
二枚貝類やクルマエビ類など,介類の餌料として有用な浮遊および付着珪藻類の安定培養技術を開発するために,ケイ酸塩の継続的溶出法を開発した。特に,クルマエビ類や二枚貝類の餌料として汎用されている珪藻類に着目し,ケイ酸成分供給剤の有効性を,珪藻類の単種培養試験,培養水の水質分析,水産動物への給餌試験,培養した珪藻類の化学成分分析による栄養価評価を通じて証明した。これまで,バッチ式通気培養方式で珪藻類を培養する場合,ケイ酸塩の欠乏が細胞増殖の制限要因となることが多かった。また,高密度に増殖した細胞の葉緑体は未発達で,栄養価が低いため,餌としての価値は低く評価されていた。本研究で開発した技術により,栄養価の高い珪藻類を高密度に生産することが可能となったことに新規性がある。
[成果の活用面・留意点]
本研究の成果は介類の種苗生産機関で活用が期待される。我が国に限らず,欧米,中国,オーストラリアでも介類の生産は盛んであり,今回開発した方法は特別の装置を必要としないため,粗放的な生産方式でも門技術を活用できることが利点としてあげられる。留意点としては,本ケイ酸供給剤は水分を含んでいるため乾燥させないように注意が必要である。また,供給量は概ね10L培養液に10〜20gを目安にする。また高圧滅菌には適さない。
[その他]
研究課題名:家畜排せつ物等の有機性資源の再利用による餌料用微細藻類の大量培養技術の開発

研究期間:平成12年度〜平成18年度

予算区分:農林水産バイオリサイクル研究(農水エコ)

研究担当者:岡内正典

発表論文等:藻類用ケイ酸成分供給剤,および藻類へのケイ酸成分供給方法(特許出願中)
[具体的データ]




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