日本海におけるアカガレイの腫瘍状疾病の原因解明
担当者名 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所玉城分室 病害防除部 三輪 理 連絡先 Tel.0596-58-6411
推進会議名 水産養殖 専門 病理 研究対象 魚類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 2(2)病原体の制御及び宿主機能活用による病害予防技術の開発
[背景・ねらい]
[ねらい・目的]

2001年から新潟県および山形県沖の日本海で漁獲されるアカガレイに腫瘍状の病変がみられるようになった。本研究は日本海区水産研究所および山形県水産試験場からの調査依頼をうけ,本疾病の原因を突き止めるために行った。

[成果の特徴]

1.病理組織学的検査の結果,本疾病は,患部にX細胞という正体不明の細胞が増殖する,いわゆる「X細胞腫」といわれるものであることが明らかになった。本疾病は世界的に広く温帯から寒帯にかけて生息する底棲魚において報告されている。

2.このX細胞が,ある種の原生動物であることを初めて明らかにし,本疾病が腫瘍ではなく,原生動物の寄生によるものであることを明確にした。
[成果の内容・特徴]

[成果の活用面・留意点]
[成果の活用面等]

1.これまで,本疾病が出現すると,その水域の水質汚染と結び付けられて考えられがちであったが,本研究により,今後そのような懸念は払拭されるものと思われる。
[その他]
[具体的データ]



図1:腫瘍状病変に罹患したアカガレイ。体表およびヒレに,複数の上皮細胞腫様の病変が観察される。メスの長さ=14.5 cm




図2:病変部の病理組織像。さまざまな大きさのX細胞が観察される(矢頭)。 X細胞は中央に丸い大型の核を有し,大きく目立つ仁が核の中央にある。Davidson液固定,ヘマトキシリン・エオシン染色。


図3:18SrRNA配列から近隣接合法によって描いたX細胞生物の推定系統図。

X細胞は明らかに原生動物と考えられ,本図ではハプロスポリディアンとクラスターを組むように描かれているが,そのブートストラップ確立は低く,既知のどの動物群に属するのかは定かでない。




図4:原生動物遺伝子のin situ hybridization。X細胞にのみ特異的にシグナル(赤茶色)が検出されており,この細胞が原生動物であることを示している。





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