マダイイリドウイルスの全塩基配列の決定と感染防御抗原をコードする遺伝子の推定
- [要約]
- 海産養殖魚の重要疾病であるマダイイリドウイルス病の病原ウイルスの全塩基配列を決定し,遺伝子組換えワクチン開発に必須な感染防御抗原遺伝子を探索,推定した。
養殖研究所・病理部・ウイルス研究室
[連絡先]0599-66-1830
[推進会議] 水産養殖
[専門] 病理
[対象] ウイルス
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- マダイイリドウイルス(RSIV)は,数多くの海産養殖魚に感染し,大きな被害をもたらすマダイイリドウイルス病の原因ウイルスである。本病の予防対策として,ホルマリン不活化ワクチンによる防除対策が普及しつつある。しかし,不活化ワクチンの製造にはウイルスの培養が必要となりコストがかかり,安価な不活化ワクチンの開発は難しい。これに代わる安価なワクチンとして,遺伝子組換えによるサブユニットワクチンの開発が有望である。遺伝子組換えワクチンの開発にはワクチンの有効成分である感染防御抗原の同定およびそれをコードする遺伝子の単離が必要となるが,これまでRSIVにおいてはそのどちらも実施されていなかった。そこで,RSIVに対する遺伝子組換えワクチンの開発を目指し,感染防御抗原の候補となるウイルスタンパク質の遺伝子の探索を主な目的にゲノムDNA全塩基配列を決定し,全ての遺伝子を同定,感染防御抗原遺伝子を推定した。
[成果の内容・特徴]
- イリドウイルスに対するサ
ブユニットワクチンの開発を目指し,感染防御抗原の候補となる遺伝子の探索を目的にRSIVの遺伝子解析を進めた結果,112,414塩基対におよぶ大きなRSIVゲノム全塩基配列の決定に成功した。ゲノムサイズの大きな魚類病原ウイルスの全塩基配列の決定は,世界でも今までに2例しかなく,もちろん,我が国においては初めての事である。遺伝子解析の結果からは,本ウイルスがイリドウイルス科の新属であることが示唆された。さらに感染防御抗原として有望なタンパク質の遺伝子を探索した結果,膜タンパク質と思われる遺伝子中にその候補となる細胞接着タンパク質と思われる遺伝子を同定することに成功した。
- [成果の活用面・留意点]
- 今後,同定したウイルス遺伝子を利用した安価な遺伝子組換えワクチン,有効性の高いDNAワクチンの開発が期待される。
- [具体的データ]
- 図1.マダイイリドウイルス(RSIV)Ehime 1株ゲノムDNA制限酵素地図
- 図2.同定したRSIV全遺伝子
膜タンパク質の可能性があるタンパク質の遺伝子に色付けした。うち赤は感染防御抗原の候補となるタンパク質の遺伝子。
[その他]
小課題名 :YAV等魚類病原ウイルスタンパク質の遺伝子の検索・単離
予算区分 :バイオテクノロジー先端技術開発研究
「病原微生物の遺伝子解析と利用技術の開発」
研究期間 :平成12年度(7〜12年度)
担当者名 :栗田潤, 中島員洋
発表論文等:
1)栗田潤・中島員洋・廣野育生・青木宙 (2000):マダイイリドウイルスゲノムDNA全塩基配列
の決定. 平成12年度日本魚病学会春季大会講演要旨集, p.7.
2)栗田潤 (2000) マダイイリドウイルスの遺伝子解析. 養殖, 37(6), p.118-121.
特許出願中:栗田・中島 (2000) マダイイリドウイルスのウイルス中和・感染防御関連タンパク
質をコードするDNA. 日本国, 特願2000-294991.
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