水産研究成果情報検索結果




低魚粉飼料がブリの消化機構に及ぼす影響の解明
植物原料主体の低魚粉飼料をブリに給餌し、消化管内での滞留時間や消化酵素活性等を調べた。その結果、通常の魚粉飼料給餌と比べて、魚の消化機構が十分に機能していないことが明らかになった。これより植物性原料による魚粉代替を進めるためには、魚の消化生理へ及ぼす影響を改善する必要があると考えられた。
担当者名 国立研究開発法人水産研究・教育機構増養殖研究所 養殖システム研究センター 飼餌料グループ 連絡先 Tel.0596-58-6411
推進会議名 水産増養殖関係 専門 魚類栄養 研究対象 魚類 分類 研究
「研究戦略」別表該当項目 1(2)水産生物の効率的・安定的な増養殖技術の開発
[背景・ねらい]
世界的に養殖生産量が増大する一方で,養殖用飼料の主原料である「魚粉」は原料魚の確保に限界がある。魚粉の価格高騰と供給量逼迫を受けて、養殖飼料には魚粉以外の植物性原料などを積極的に利用する必要に迫られている。しかし魚粉を大幅に削減して植物性原料を使用した場合,栄養成分の要求量を満たしているにも関わらず、魚の成長が低下することが知られている。その原因として、植物性原料が魚の消化機構を阻害することが分かってきた。そこで、重要な養殖対象種であるブリについて、植物性原料主体の飼料が消化機構に及ぼす影響を詳細に解析した。
[成果の内容・特徴]
魚粉主体飼料(FM)と植物性原料主体の低魚粉飼料(LFM)を用いてブリ稚魚を6週間飼育し、その後、各試験区の魚について摂餌後の消化管内容物の性状や消化酵素活性などを調べた。その結果、LFM 区の魚はFM 区に比べて 1) 胃内容物の消失時間が短い(図1)、 2) 消化管内容物のpHが低い(図2)、 3) 胃や腸での消化酵素分泌量および合成量が少ない(図3)、 4) 胃酸分泌ホルモンの合成量が多い(図4) ことが示された。これより、植物性原料主体飼料で飼育したブリは、摂餌後に胃酸の過剰分泌や消化酵素の分泌抑制などを起こしていたと考えられ、本来の消化機構が十分に機能していないことが明らかになった。またこのようなLFM給餌に伴う消化機能の不全は、FM飼育の魚に一時的にLFMを給餌した場合にも観察されたが、LFMで6週間飼育した魚のほうがより顕著であった。本研究により、植物性原料主体の飼料給餌によるブリの成長不良について、その原因の一端が解明された。
[成果の活用面・留意点]
本研究は養殖重要種であるブリについて、植物性原料を用いた飼料を摂取した時に消化機構でおこる変化を具体的に明らかにしたものである。ブリ用飼料の低魚粉化を植物性原料を用いて進める場合、魚の消化生理を阻害しない方向での改良が重要になると考えられ、本結果はそれに必要な基礎的な知見となる。
[その他]
研究課題名:低魚粉飼料の開発と実用化に関する研究

研究期間:H28~H30

予算区分:運営費交付金(一般研究)

研究担当者:村下幸司、松成宏之、古板博文、奥 宏海、吉永葉月、山本剛史

発表論文等:Aquaculture, 506, 168-180 (2019)
[具体的データ]




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