第27回UJNR水産増養殖専門部会日米合同会議

1998年度ポスター

事務会議議事要録

第27回UJNR水産増養殖専門部会日米合同会議は、平成10年(1998年)11月11日(木)と12日(金)の両日に、三重県伊勢市の伊勢シティープラザにおいて開催された。事務会議は、シンポジウムに先立ち11月11日の午前に開催された。シンポジウムの主題は、「魚介類育種の目標と戦略」であった。

はじめに、日本側部会福所邦彦事務局長が開会を宣言した後、所用により不在であった日本側部会長加藤守養殖研究所長及び副部会長安永義暢参事官に代わって、松里寿彦養殖研究所企画連絡室長より、米国側部会長James McVey博士を初めとする米国使節団及び全ての参加者に対し歓迎の意が述べられた。また、今回のシンポジウムの開催趣旨に関し、次のように述べた。

水産増養殖部会はUJNR諸活動の中で最も活発に活動している部会であるが、これは日米の過去及び現在の研究者の努力に大きくよるものである。水産増養殖は21世紀の世界の食糧生産に大きな役割を果たすものと考えられる。そのためには多くの問題を解決する必要があり、本会議にご参集の方々の役割は益々大きくなると考えられる。この会議後、現地検討会への参加者には日本の増養殖研究の実際の姿を見学して戴く予定である。三重から、富山、石川、福井、京都まで各地の増養殖現場の視察と研究者との交流による成果が期待される。また、合衆国からの参加者各位には、専門の分野だけでなく、日本の風景、歴史、文化や生活の一端を知って頂ければ幸いである。
今次会議のシンポジウムのテーマは「魚介類育種の目標と戦略」であり、遺伝育種のための基礎研究、種苗生産と育種、栽培漁業と資源管理等の議論がなされる予定である。21世紀の増養殖の発展にはこれらの諸問題の解決が必須であり、活発で有効な議論を期待する。

開会挨拶の最後に、本会議の開催運営にあたった米国側部会Paul Kilho Park事務局長、日本側部会福所邦彦事務局長、並びに事務局委員各位に感謝の意を表した。  

次いで、米国大使館科学部次長Edward Kloth博士より、米国大使に代わって開会基調挨拶が以下のように述べられた。

本日、日本のこの美しい場所でこの会議に参加できたことを光栄に存ずる。まず、この卓越したUJNRを推進してきた高名な科学者諸兄に対し、Foley米国大使からの慶祝の辞をお伝えする。
昨日、東海道を新幹線で名古屋に向かいながら、本年が明治130周年であると同時に、行政や経済ばかりなく教育や科学の変革といった、日本のリーダシップが未来に向け新たな船出を始めた年でもあると想起した。
我々米国人は、かのペリー提督の黒船がもたらしたのと同じような、新たな日本の変革の始まりに臨している感がある。今日、幸運にも、日本と米国は自らの発意で、共に緊密に働いている。両国の優秀で勇敢な人々は、何千マイル隔てられていようとも、人類が直面している共通の地球上の問題を解決しようと、調査船の上で、スペースシャトルの上で、研究室で、あるいは電子情報媒体の中で、協力し合っている。
天然資源管理への科学技術の応用を推進するため、1964年、天然資源の開発利用に関する日米共同プログラム(UJNR)が設立された。本増養殖部会は1970年に設立され、ほぼ30年にわたり強力に推進されてきている。この中で、共同研究のみならず、次世紀を見据えた研修生の交換留学プログラムも準備されている。
数あるUJNRの部会や成果の中でも、この水産増養殖部会が最も力強いものであると確信する。長年にわたる交流や議論を通して、UJNRは技術者や研究者や科学者のネットワークの広がりを育んできた。そして、互いの研究に対する相互の尊重、友情そして信頼を築き上げてきた。科学の持つ寛大さは、私のような門外漢には驚くべきものがある。UJNRは、地球的共同体に至る極めて効率的な乗り物であり、未来の国際交流への重要な基盤を与えるものである。
また、この共同事業は新たに進むべき重要な方向を照らすものである。実際、UJNR推進の当然の結果として科学技術に関する日米間合意がなされ、他の多くの者がそれに従って進むことができる。
地球問題に関する日米共同事業のコモン・アジェンダも、元をたどればUJNRのような両国の市民的な協力に直接起因するものである。1993年に始まった日米コモン・アジェンダ決議も、この3月11日に行われた双方の調印で5周年を迎えた。この日米両国政府による、公的機関だけでなく企業や非政府組織(NGO)を含む私的な機関をも取り込んだ新たな試みも、今大きなマイル標を打ち立て、その活動の取り組みは、西太平洋地域における小児麻痺撲滅から世界の珊瑚礁の保護まで、幅広い問題に及んでいる。
このコモン・アジェンダ決議は、(1)健康の推進と人類の発展、(2)世界の安定への挑戦、(3)地球環境の保護、(4)科学技術の発達、の4分野に焦点を絞っている。これまでこの事業を発展させ、我々に我々自身と未来の世代のためにさらに発展させ続ける責任があることを教えてくれた、このコモン・アジェンダ決議とそれに係る多くの人々の努力に感謝したい。
この部会の水産増養殖に関する取り組みも、コモン・アジェンダの重要な一部となっている。それは、日米のような発展した豊かな国の者だけではなく、極めて厳しい環境に曝されているその他多くの人々にとっても、有益なことである。飢えや飢餓に直面した国の食糧安定供給は、将来世界の食糧自給を如何に確保するかということと同様、重要な地球問題である。
日米は協力して世界規模での、特に弱者のための食糧の質と量の向上を目的とした技術の開発を行ってきた。これらの目標に向かって、日米は世界食糧供給決議を実行してきた。協力活動はすでにアフリカとアジアで進められている。我々は協力関係をさらに広げており、食糧危機を防ぐため共に活動できる新たな方策を考えている。この増養殖部会の活動も、この世界の努力に直接貢献するものである。

次いで、相互の参会者の紹介に移り、松里部会長代理は、日本側部会の福所邦彦(事務局長)、中山一郎(事務局次長)、鈴木 徹(文献交換担当)、原 素之(共同研究担当)、生田和正(出版担当)、高柳和史(前出版担当)の各事務局員、本会議の後援者である農林水産技術会議事務局 上田泰史、また、養殖研 藤井武人、水産庁研究指導課 井上 潔、西水研 村井武四(代理)、瀬戸内海水研 薄 浩則(代理)、日水研 伊藤祐子、水工研 仲宗根琢磨、北水研 大久保伸幸、国際農林水産業研究センター マーシー・ワイルダーの各国内委員、及び、同時通訳者 成川佐紀子を紹介した。

McVey部会長は、米国側部会のW. Heard博士、Auke Bay Laboratory、NMFS、C. Helsey博士、Hawaii Sea Grant College Program、C. Mahnken博士、Manchester Laboratory、NMFS(副部会長)、K. Park博士、NOAA(事務局長)、Ms. J. Keller、NOAA(出版担当)、J. Sullivan博士、California Sea Grant Program(研究者交流担当)、H. Bern博士、University of California、Berkeley、C. D'Elia博士、Maryland Sea Grant College Program、Mr. U. Joshi、Office of Oceanic and Atmospheric Research International Activities(文献交換担当)、の各メンバーを紹介した。

この後、書記の人選に移り、福所事務局長より、日本側から生田事務局員、米国側からKeller委員が推薦され、了承された。
また、事務局会議の議事次第、シンポジウムプログラム、現地検討会日程等(添付資料 I )が提案され、異議なく了承された。

文献の交換

鈴木事務局員より、日本の11試験研究機関から135編の研究報告が収集されたことが報告されそのリストが米国側に手交された(添付資料 II )。別刷りは後日、米国側に郵送される予定である。また、米国側のMr. Joshi事務局員より、水産育種の分野で46編の研究報告が収集されたことが報告された(添付資料 III )。別刷りは、後程手渡された。

また、Mr.Joshi事務局員より、1997年にNew Hampshireにて開催されたUJNR会議において提案されたインフォメーションセンターの設立に関し、NOAAと農林水産省との間で協議が行われてきたとの報告があった。米国側政府機関間の協力の結果、UJNRインフォメーションセンターがNOAA中央図書館のウエッブサイト上に設立され、水産増養殖部会の交換文献及び合同会議のプロシーディングがインターネットで閲覧できるようになった。また、Rhode IslandにあるSea Grantの委託機関においても、Sea Grantの事業による文献の電子保存が行われている。McVey部会長より、UJNR水産増養殖部会会議に関する情報の交換に、このような電子媒体をより一層利用することが重要であることが提案された。これらのウェッブサイトのアドレスは後日日本側部会に通知する。

松里部会長代理より、このような公式記録に残る情報交換だけでなく、様々な場面での日米研究情報交換への協力に対し、米国側部会メンバーへの感謝の意が示された。例えば、1998年3月に起きたタンカー事故の際には、Mahnken博士に原油汚染に関する文献収集の協力を賜った。日米交流にとって、このような科学情報交換が大変重要であることが指摘された。

2.研究者の交流 

中山事務局次長より、UJNR水産増養殖部会研究者交流計画に関連し、1997年4月1日から1998年8月31日までの間、日本側7研究機関から34人の研究者が延べ36回米国を訪問したことが報告された(添付資料 IV)。この研究者交流に関する情報は、養殖研究所のホームページに掲載されている。

また、Sullivan委員より、1997年から1998年にかけて、ヒラメ、カキ、サケ、アワビの遺伝育種に関する17の共同研究が実施されたことが報告された(添付資料 V)。これらの研究は、北水研、東北水研、東大海洋研、京大で行われ、米国側からはCalifornia、Ohio、Rhode Island、及びNorth Carolinaの研究所及び大学の研究者が参加した。さらに、UJNRとMcVey部会長の支援により、新たな科学交流が1997年9月より始まり、北海道立函館水産試験場資源増殖部石野健吾博士が、標識技術の研修のため、NOAAのNMSF、Montlake Laboratoryに6ヶ月間滞在した。

3.共同研究

原事務局員より、1995年に開始したUJNR水産増養殖部会の主要な共同研究である、ヒラメ増殖プロジェクトについて報告があった。ヒラメ種苗放流実験は順調に進んでおり、前回のNew Hampshire会議の後、本会議出席のMr. Nick Kingを含む3名の研究者がこの研究に参加した。本年の主研究課題は、放流後のヒラメ種苗の回遊行動、成長及び生残に関してであり、その詳細なデータは11月20日に舞鶴で開催される現地検討会の席で報告される予定である。また、放流実験と餌料生物に関する別のヒラメ共同研究も、水産庁、西水研及び日水研によって実施されている。福所事務局長より、この共同研究に対する京都大学 田中博士及び中村博士、並びに福井県立大学 富永博士らの協力に、感謝の意が表された。

Park事務局長より、1999年度の共同研究に伴う学生の交換留学が現在日米間で協議されており、京都大学 田中 克教授から米国訪問に2名の学生が推薦されていることが報告された。さらに協議を続ける必要があろう。

この件に関し、Mr.Kingより、現在米国側はこの2名の学生を来春North CarolinaとNew Hampshireに受け入れる準備をしているとのコメントがあった。また、この2名には彼が今春日本で経験したような良い体験をして欲しいとのコメントが付け加えられた。松里部会長代理より、日本では大学等と異なり政府の国立研究機関がこのような共同研究プロジェクトに経済的支援を行うことは大変難しく、米国側の支援に対し感謝の意が述べられた。福所事務局長より、この共同研究の件に関して、視察旅行中さらに協議したいとの意見が述べられた。

4.出版物  

福所事務局長より、日米両出版担当の高柳事務局員とKeller委員の、昨年New Hampshireで開催された第26回会議のプロシーディング出版の労に対し、感謝の意が述べられた。Keller委員より、第26回プロシーディングは現在出版中であり、年末には生田新出版担当事務局員に送付されるとの報告があった。また、本第27回会議のプロシーディングの原稿の締め切りは1998年12月31日で、米国側の原稿を取りまとめた後生田事務局員に送付することとなった。McVey部会長から、過去のUJNRのプロシーディングをウエッブサイトにも掲載すべきであるが、著作権等の問題があり、本会議中に解決策を協議したいとの提案があった。これに対し、松里部会長代理から、過去のプロシーディングが多くの有益な情報を含んでおり、ウエッブサイトを利用して世界中の研究者に公開することに前向きに取り組みたいとの返答があった。

5.視察旅行  

福所事務局長より、シンポジウム後に予定されている視察旅行及び現地検討会に関して説明がなされた。今回の視察旅行は以下の4つの特徴がある。(1)太平洋と日本海の両側への訪問、(2)視察旅行で訪れる研究機関よりシンポジウム講演者を招待、(3)ヒラメ増殖共同研究の現地視察、(4)UJNR水産増養殖部会に貢献した、Shaw博士、Mahnken博士、Bern博士、Park博士への感謝状贈呈式の開催。詳細な旅行日程が、各参加者に配布された(添付資料 VI)。また、11月13日には養殖研究所においてミニシンポジウムが開催され、McVey部会長、Virginia Institute of Marine Science、Standish Allen博士、Bern博士及び東京大学 小林牧人博士より講演を賜る予定であることが報告された(添付資料 VII)。

6.UJNR日本側部会の新組織体制  

松里部会長代理より、1998年10月1日をもって発効した養殖研究所の組織再編に伴い、UJNR日本側部会組織を一部変更することが報告された。次回UJNR会議より、養殖研究所の企画連絡室長が事務局長を、研究交流科長が事務局次長を務めることとなった。また、新設された養殖管理研究官が部会長を補佐して、部会活動を支援することとなった。
また、McVey部会長から、NOAAの所属する米国商務省(DOC)の新組織についての発言があり、DOC水産増養殖政策検討会が近日新たに設立される予定であり、そこで2000年に開始する漁業と水産増養殖のための新政策が決定されることが報告された。

7.その他の協議事項

Mahnken博士より、日本側部会に対し、University of Alaska、Fairbanks、Anthony Gharrett博士の遺伝学研究のために、西日本海域のメバル類の標本採集への協力の要請があった。McVey部会長は、この協力もUJNR共同研究の一つと位置付けたいと提案した。松里部会長は、この要請を快諾し、また、このような日本に対する要請をUJNR増養殖部会を通じて積極的に行って欲しいと述べた。その他、McVey部会長より、米国側UJNR増養殖部会への参加者拡張のため、NOAAとHawaiiに所在するOceanic Instituteの一層の協力関係を推進したいとの意見が述べられた。

8.来年度の日米合同会議について

Helsey博士より、次回第28回UJNR日米合同会議は、1999年11月4日よりHawaiiのHonoluluにおいて開催され、その後の視察旅行では、Oahu島、Molokai島、Maui島及びHawaii島を訪れる予定であることが述べられた。期間は当面11〜13日間を予定している。1999年11月16日より、丁度Hawaii島のKailua-Konaで「海産観賞魚養殖学会'99」が開催されるため、UJNR参加者の一部が視察旅行後この会議にも参加するであろうことを考慮すると、11月4日近辺に始めるのがよいタイミングである。また、島間の移動に使用する飛行機の座席数が極めて限られているため、参加者総数を早めに押さえる必要があることを強調した。

9.閉会の挨拶

McVey部会長より、本UJNR会議の開催関係者を初めとする全ての参加者に謝意が述べられると供に、本UJNR事務会議の閉会の挨拶が以下のとおり述べられた。

まず初めに、今日この会議に米国側より39名もの科学者及び行政官が参加していることは、我々が日本側とともに働くことに強い関心を抱いていることを示していると述べたい。米国大使館科学部次長Edward Kloth博士は、医療や食料に関する日米科学協力が地球的レベルで健康や食糧供給の増進に貢献していることを述べられたが、これは我々が新世紀へ向かうための新たな総合的な推進力といえる。そして、この30年にわたるUJNRでの協力は、地球食糧安全保障に大きく貢献する基盤を築いてきた。今、人類の置かれた環境におけるさらなる食糧資源の供給は一つの挑戦である。この地球規模の食糧安全保障の必要性によって、米国商務省やNOAAは水産増養殖に対して支援を推進していると確信する。このUJNRで始められた共同研究に関する合意は、我々が将来の重要課題の解決のためにともに働く効果的な方法を築いた。私は、この視察旅行や明日のシンポジウムあるいは11月13日のミニシンポジウムの中で、どうしたら我々がともに働けるかということに関し議論を続けて欲しいと、特に主張したい。我々は、この電子時代に、無数に発信され続ける情報や知識をとりまとめるための、よりよい相互のコミュニケーションを図る様々な道具を持っており、それらを十分に活用する必要がある。この水産増養殖部会が、この電子情報交換において他のUJNRの部会のよいお手本となることを願う。そして、我々がヒラメ増殖共同研究において努力を重ねてきたように、常に日米共通の経済的基盤を築くことも、大変重要なことである。米国では、増養殖は国家計画に基づいて国家レベルで発展し続けている。国際交流もこの計画の中に明確に位置付けられている。我々は、農務省、商務省、内務省、連邦技術者協会、及び連邦薬務局の五つの合衆国連邦組織の下にある、約25の国家機関による水産増養殖に関する合同小委員会を持っている。これらは年に4回参集し、事業に係る資金や目標をどのように統合再編するか決定している。私はこの部会に参加して、日本や諸外国との国際協力事業を示し、それらがいかに重要であるかということを主張してきた。私の将来展望は、国際的な共同事業をさらに広げて行くことであり、我々のもつ資本を最大限に活かしてともに研究を進めて行きたいと望んでいる。皆様の歓待と、この共通の目標の実現に向かって行くための機会を与えていただいたことに感謝の意を表する。

日本側松里部会長代理及び米国側McVey部会長は、事務会議のために予定されていた全ての議事が終了したことを確認し、第27回UJNR水産増養殖専門部会日米合同会議事務会議の閉会を宣言した。

日本国三重県伊勢市にて 1998年11月11日