魚類の新しいサイトカイン(インターロイキン12)を発見−哺乳類以外で世界初


養殖研究所・病理部

[連絡先]0596-58-6411

[推進会議]水産養殖関係試験研究推進会議

[専門]病理

[研究対象]ふぐ

[分類]研究


[ねらい・目的と成果の特徴]

・ヒトでは,これまでに多くのサイトカインが発見され,健康診断,病気の診断などに利用されている。一方,魚類のサイトカインは各魚種とも1−数個しか見つかっておらず,ヒトに比べて研究は著しく遅れている。そこで,魚類の新規サイトカイン遺伝子を探索したところ、インターロイキン12(IL-12)を発見した。IL-12は、哺乳類では健康度の指標として、現在最も注目を集めているサイトカインである。

[成果の活用面等]

・今後、魚類のIL-12の役割について研究を進めるが、哺乳類と同じ働きを持っていれば、養殖魚や放流魚の健康診断や免疫力の評価に活用できる。

[具体的データ]

図1】:インターロイキン12(IL-12)は、2つの成分IL-12 p35とIL-12 p40からできている。フグのIL-12 p35とp40の遺伝子は、それぞれほ乳類のIL-12 p35とp40によく似ていた。なお、IL-6は、ほ乳類でIL-12に最も構造がよく似たサイトカインとして知られている。

図2】:IL-12 p35とp40の働きを調べるため、細菌の主成分(LPS)とウイルスの成分(poly(I:C))をフグに接種した。接種1時間後(1h)、3時間後(3h)、6時間後(6h)、24時間後(24h)に解剖し、脾臓におけるIL-12 p35とp40の合成速度を調べた。その結果、ウイルス成分の接種3及び6時間後に、IL-12 p35 の合成速度が顕著に増加したが、IL-12 p40 の合成速度は変化しなかった。一方、菌体成分の接種後には、IL-12 p35もp40も合成速度は変化しなかった。

 本IL-12はウイルス感染時に分泌され、その働きはp35の合成速度によって調節されると考えられた。